「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/11/13

「疲れた男のユートピア」

十時間寢てもまだ眠い。休日向けの洋風朝食を済ませ、朝風呂の湯船で「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂・序文 / 国書刊行会)のボルヘスの巻「パラケルススの薔薇」より「疲れた男のユートピア」(鼓直訳)を讀む。

「百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。」

同短篇に登場する未來人が、本を二千冊所有してゐると言ふ主人公に対して、自分は四百年生きてゐるが十五冊も読めてゐない、繰り返して讀むことが大事だ、と言ふ。この未來に於ては印行は絶滅してゐる。電子出版に代はられたのではなく、書写に戻つたのである。印行は不必要にテクストを増大させる愚行だと分かつたから。ところで、同書巻末にボルヘスがアルゼンチンの出版社の企画で選んだ ``Biblioteca personal"(「個人図書館」)百冊のリストが収められてゐる。最近の私は、引退後に繰り返して讀む精々百冊程度の書架を持ちたいと思ふやうになつて來たので、参考になる。

晝食はお好み焼きと赤ワインを一杯だけ。のち、「青い虎」を讀みながらグラスの殘りでチーズを少し。さらに、焼き芋。晝寢二時間のあと、家事。掃除や料理の仕込み。夕方になつて再び風呂のあと夕食の支度。牛蒡と人参のきんぴら、葱と焼豚、のち、うな茶。夜は、いつの間にかまた冬だなあ、と思ひつつ「和漢朗詠集」(三木雅博訳注/角川ソフィア文庫)など。風雲ハ人ノ前ニ向ヒテ暮レ易シ、歳月ハ老ノ底ヨリ還リ難シ、か。

さてまた明日の朝からお仕事だ。日曜日の夜から既に疲れ氣味なのだが。