「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/09/30

週末の晩酌

涼しい。夕方、本郷で一つ所用を片付けて、徒歩にて歸宅。遅くなつたので、すぐに晩酌の支度。

白菜の浅漬、人参とちりめんじやこの寒天寄せ、納豆に焼き海苔で、いただきものの「賀茂鶴」大吟醸を一合ほど。鮭の握り鮨。食後にいただきものの葡萄を數粒。

涼しい秋風に冷酒で口を湿す夜。

2016/09/29

真昼の悪魔

今日も少し寢坊。とは言へ、朝食のあと、ラテン語の単語カードを作り(代名詞 hic, ille, iste の活用)、「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)を少し讀み進め、いつも通りに出勤する。いつも通りに退社して歸宅。朝と違つて秋らしい涼しさを感じる。天気予報によれば、まだまだ先まで夏日が續いてゐるが、朝夕には秋が訪れつつあるのかも。

歸宅して風呂に入つてから晩酌。ちりめんじやこ大根おろしと鱧の板山葵で冷酒を五勺。最近、辛口の大根おろしがないとお歎きの私だつたのだが、これは辛い。のち、素麺一把を煮麺にする。具は鱧の蒲鉾、人参、若布。だしの殘りは寒天で固めて煮凝りにしておく。食後にいただきものの葡萄を數粒。

夜は「退屈 息もつかせぬその歴史」(P.トゥーヒー著/篠儀直子訳/青土社)を讀む。エヴァグリオス「八つの悪しき考えについて」より「真昼の悪魔」、すなはち「怠惰(acedia)の悪魔」についての引用を巡る考察の箇所。

2016/09/28

賀茂鶴

酷い蒸し暑さ。秋はいづこに。先週は祝日が多かつたからだろうが、今週は日が経つのが遅い。まだ水曜日だなんて、一体どういふことでせう。

いつも通りに歸宅。夕食の前に前菜としての晩酌。鱧の蒲鉾で板山葵。酒を少々。いただきものの「賀茂鶴」大吟醸を冷やで。漸くほつと一息つく。最近、酒量が増えてゐるやうな。氣をつけよう。

2016/09/27

キヌア

今日も蒸し暑い。秋はいづこへ。往きの車中の「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)は第五巻に入つた。「蛍」の帖。玉葛に養父、光源氏の魔の手が迫る。「親にそむける子ぞ類なき」と迫る光源氏、「この世にかかる親の心は」と躱す玉葛。

歸りは「死の笑話集」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ 1761)。歸宅して先に夕食の支度。少し遅くなつたので、作りおきのキヌアに昨日のレバニラ炒めの殘りを添へただけ。赤ワインを少々。キヌアも言はゆる「スーパーフード」らしい。もちろん、いただきもの。食後に、これまたいただきものの葡萄を數粒。

これから風呂に入つてのち、「退屈 息もつかせぬその歴史」(P.トゥーヒー著/篠儀直子訳/青土社)を讀んで寢る予定。

2016/09/26

第0章

寢坊して「古楽の楽しみ」を聞き逃した。いつもの朝食のあと、ラテン語の勉強をして、そのあとの初歩の數學の勉強は、今日から「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)。線型代數と違つて基礎論はほとんど何も知らないので樂しみ。とりあへず今日は「第 0 章 導入」を讀み終へた。

寝不足と変な蒸し暑さで体調が酷く悪い氣がするのだが、いつも通りに出勤、いつも通りに退社。歸宅して、風呂に入つてから夕食の支度。この蒸し暑い気候に合はせようと思つて、レバニラ炒めと焼き餃子でギネスのエクストラ・スタウトを 1 パイント。食後にいただきものの葡萄を少し。

夜は、「退屈 息もつかせぬその歴史」(P.トゥーヒー著/篠儀直子訳/青土社)を讀む。

2016/09/25

退屈

家事と讀書の一日。「退屈の小さな哲学」(L.スヴェンセン著/鳥取絹子訳/集英社新書)、「退屈 息もつかせぬその歴史」(P.トゥーヒー著/篠儀直子訳/青土社)など。この頃の私は、閑暇と労働、孤独と退屈などに就て集中的に考へてゐるので、その一環として。

涼しい夜。生キャベツにいりこ味噌、茄子の田舎煮、鱧の板山葵で冷酒を五勺。のち、鮭茶漬。食後にいただきものの葡萄を少々。「退屈の小さな哲学」を讀みながら。


2016/09/24

サミング・アップ

いつもより少し遅く起きて、休日用の朝食。ヨーグルト(チアシード入り)、小さなトースト一枚にバタ、スクランブルドエッグ、ボローニャソーセージ、キャベツの炒めもの、珈琲。

午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミに参加。「確率解析」(重川一郎著/岩波書店)より Ornstein-Uhlenbech 過程について K さんの発表。流石、良く準備された講義のやうに軽快だつた。ゼミ参加者によるランチはベトナム料理。ブンボーフエ、生春巻、ちまきなど。

図書館で「退屈」に就て調査をし、何冊か本を借り、スーパーで山葵を買つて帰宅。午後は「サミング・アップ」(S.モーム著/行方昭夫訳/岩波文庫)の續きを讀む。三時にいただきものの洋菓子で珈琲。

夕食は筑前煮、茄子の田舎煮、白菜の浅漬、押し麦入りの御飯、豚汁。夜も少しワインを飲みながら、「サミング・アップ」を讀む。讀了。充実した夜だつた。私にとつてモームは長い間、古い受験英語参考書にやたらと出てきて、人間と人生の真相を皮肉に語る、やや通俗的な作家、と言ふ程度だつた。今でも偉大な小説家とまでは思へない。ただし、その率直さ、明解さ、玄人のサーヴィス精神に裏打ちされた物語の面白さは、(モーム本人が思つてゐた以上に)、長く愛されて、何度も再發見され續けるのではないかと思ふ。

2016/09/23

Done Right

平日の毎朝、十五分から三十分づつ讀み進めてゐた "Linear Algebra Done Right" (S.Axler / Springer) を讀了。三ヶ月くらいかかつたらうか。この本でとられてゐる方針が線型代數入門の「正しいやり方」か分からないが、少くとも一案かも知れない。

一番驚いたのは、行列式が最後まで出てこないことだ。実際、全 10 章の最終章が "Trace and Determinant" で、そこに至るまで定義すらされない。しかし、私自身、最終章までそのことに気付かなかつたので、行列式が全く出て来ない線型代數入門も自然にありうるのだ、と言ふことは一つの発見だつた。

その意味では、行列式の性質や具体的な計算をごちやごちや教へるのは、線型空間や線型写像、線型作用素の基本的な性質を學ぶべき線型代數入門の本筋ではないのかも知れない。しかし一方では、行列式は非常に不思議で豊かな対象なので、行列式なくして線型代數のどこが面白いのか、と思ふ人もゐるだらう。

いづれにせよ、非常にすつきりと書かれた教科書で、これで線型代數の入門が完了するわけではないが、線型代數の一番大事なところが一筆書きで分かつた、と言ふ氣にさせる入門書である。なお、演習問題が豊富なのも良い。既に入門を通り過ぎた人なら一目で分かる易しい問題が大半だが、おそらく正しいレベル設定である。ちなみに解答はついてゐないが、その選択も正しい。

ところで来週の月曜日からは、「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)を平日の毎朝、少しづつ讀んで行く予定。この本を選んだ深い理由はない。単に、基礎論は大學一年生の時に一般教養の「記号論理学」の講義を受けただけで、ほとんど何も知らないので一度勉強してみたかつたのと、たまたま新刊書で見かけたから。

2016/09/22

スーパーフード

秋分でお休み。雨。終日、ゆつくりと「サミング・アップ」(S.モーム著/行方昭夫訳/岩波文庫)を讀んだり。

朝食は、チアシード入りのヨーグルト、小さなトースト一枚にバタ、珈琲。

チアシードはちよつと前から流行してゐる「スーパーフード」らしい。知り合ひが送つてくれたのだが、どんな食べ物でも少し食べる分には身体にとても良い。ただ、流行ものが移り変はつて行く。いづれ径山寺味噌や高野豆腐が、ハリウッドやパリで大流行のスーパーフードになるかも知れない。それはさておき、チアシードは毎朝、有り難くいただいてゐる。小さなタピオカのやうな不思議な食感が面白い。多謝。

晝食はインスタントラーメンを使つて湯麺的なものを作つた。三時にいただきものの洋菓子で珈琲。夕食は、鰯の生姜煮(沢山あるので毎日、食べざるを得ない)と茄子の煮ものを肴に冷酒を五勺。のち、大根おろしにちりめんじやこ、押し麦入りの御飯、豚汁。夜もモームの「サミング・アップ」。味はひ深い。

2016/09/21

秋来たる

いつものやうに夕方退社。かなり涼しい。二千年も待つた氣がするが、漸くに秋らしい。

明日はまた休みなので嬉しい。一日暇なので、モームの「サミング・アップ」(行方昭夫訳/岩波文庫)を読もうと思つてゐて、それが樂しみなのである。

歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。鰯の生姜煮、筑前煮、隠元の胡麻和へで冷酒を五勺。今日も無事に生き延びたことを喜ぶ。のち、大根おろしにちりめんじやこ、焼き海苔、卵かけ御飯、豚汁。食後にモッツァレラの燻製で赤ワインを少しだけ。

2016/09/20

麦飯

強く降りつける雨の中を歸宅し、まづ着替へをする。今日は遅くなつたので、食事から。冷たい前菜を冷蔵庫から皿に移し(隠元の胡麻和へ、人参と隠元の鶏肉巻き)、ワインをグラスに注ぎ、猫を私の椅子から追ひ払ひ、やれやれと一息付く。今日も何とか無事に過せたやうだ。夕食は鰯の生姜煮、豚汁、押し麦二米八の麦飯。麦三か四くらゐでもいいかな。夜は「働くことの哲学」(L.スヴェンセン著/小須田健訳/紀伊國屋書店)など。

2016/09/19

老猫を敬ふ

私のやうな老人が皆から敬はれる記念日らしいが、終日、猫としか話さなかつたし、うちの猫は人間に換算すると私より年上のやうなので、誰からも敬はれない一日。せめて猫を敬ふ。

朝食は平日いつもの納豆定食。そのあといつもの平日のやうに、ラテン語と線型代數の勉強を三十分づつ。出勤する代はりに、午前中は數學を考へる。

昼食はお好み焼きと昨日のシャンパンの殘り。さらに、筑前煮でシャンパンの殘りを飲みつつ、生けた白菊を愛でつつ、労働と閑暇と人生に就て考察する。三時に珈琲といただきものの洋菓子。

夕方風呂に入つてから夕食の支度。筑前煮、豚肉生姜焼きにキャベツの千切り、御飯、ピーマンの味噌汁。

夜は高野豆腐を肴にシャンパンの最後の殘りを飲みつつ、「人間臨終図巻 4」(山田風太郎著/徳間文庫)の「八十九歳で死んだ人々」から「百代で死んだ人々」までを讀む。全巻讀了。最後は泉重千代さんなのだが、この本に挙げるやうな人だらうか、とも思ふ。実際、今の人は泉重千代が誰だか知らないのではないか。おそらく山風先生、最後の一文が書きたかつただけでは。それはさておき、名著である。

2016/09/18

日曜日

精進日。朝食はヨーグルトと、小さなトーストを一枚焼いてバタに珈琲。晝食は海苔巻、稲荷寿司、紅生姜、シャンパンを一杯だけ。海苔巻に蒲鉾が入つてゐるが、まあ少しくらゐは良いだろう。夕食は、高野豆腐と小松菜のひたしと白菜の浅漬でシャンパンを少々。のち、海苔巻と稲荷寿司の残り、紅生姜、石蓴の澄まし汁。

2016/09/17

つくりあほう

ワインを一合ほど水筒に詰め、チーズ一切れを包んで、家を出る。さらに木挽町「辨松」で一番安い赤飯の「幕の内一番」を買ひ、歌舞伎座へ。「秀山祭九月大歌舞伎」の晝の部を観劇。「碁盤忠信」、「太刀盗人」、「一條大蔵譚」。

無能なふりをしてゐるが実はそれは世を欺く仮の姿……と言ふテーマは歌舞伎に良くあるが、一條大蔵卿は無能どころか、藤山寛美のアホ丁稚なみのアホのふりをしてゐる設定。役者はアホを演じる人を演じるわけだが、なかなか難しいと思ふ。大星由良之助のやうな無能なふりや駄目男のふりではなくて、アホのふりなので、どうしても観客まで馬鹿にされてゐるやうな氣になつてしまふ。ここを嫌味なく、品良く、演じるのが難しさうだ。

今回は吉右衛門が演じてゐて、悪くはなかつたが、生まれも育ちも関西の私からしてみれば、まだ嫌味が殘る。アホの真髄は関西人にしか演じられないので、仁左衛門などには一歩譲るのではないかと思ふ。

2016/09/16

花散里

今週もとりあへず無事に週末に辿り着いた。この週末は三連休で特に用事らしい用事もないし、色々じつくりと考へたい。

通勤の車中の讀書、「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)は「玉葛」の帖から「初音」へ。およそ栄華を極めた光源氏は新春、女性たちそれぞれを訪ふ。やはり花散里が一番、幸福さうである。

花散里は、正妻の地位にある紫の上に次ぐ女性だが、容貌はもう一つで、夕霧にさへ「かたちのまほならずもおはしけるかな」と評され、既に若くもなく髪も薄くなつてゐる。しかし、性格が温厚、控へ目で誠実、もの靜かで、ことさら風流に見せようとすることもなく「あてやかに」(品よく)暮らしてゐるところが、いつまでも光源氏に大事にされ、何かと頼りにもされ、格別に愛される。夕霧や玉葛の母親代はりになり、最終的には夕霧の子の面倒まで見るのだが、便利に頼られたと言ふ面もあるにせよ、花散里本人は血の繋らない子や孫たちを見守りながら、最期まで幸せに穏かに暮らしたのではないか。

当たり前だが、結局のところ、人間の財産で最も素晴しいのは温厚で篤実な性格である。性格が温厚で篤実であるのはつまり、幸せだと言ふことであり、結局、幸せな人は幸せだ、と言ふトートロジに過ぎない。残念ながら、生まれつきか、もしくは子供の頃には定まつてしまふ財産のやうに見受けられるので、幸せに生まれついた人は幸せである、と言つてゐるだけなのかも知れない。

2016/09/15

大根おろし

蒸し暑いとは言へ、少しづつは涼しくなつて來てゐるのだらう。少なくとも夜は寝易い。

夕方、親会社の全体会議を終へて退社。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。良い豚肉をいただいたので大根の薄切りとあはせてしやぶしやぶ。大根おろしとポン酢で。鍋の残りのスープで饂飩を茹でて、大根おろしと卵で食す。たつぷりの大根おろしにポン酢を差し、そこにポーチドエッグを乗せて、茹で上がつた饂飩とからめて食べると言ふ、料理とも言へないやうな私のオリジナル料理だが、なかなかよろしいものである。

好物がよぼよぼの老人になつても食せるものかどうかは、大事な問題だ。例へば、歯応え十分のアメリカンなステーキが大好物、だなんて人は、かなり若い内から食べられなくなる不幸に陥る。私が好きなのは、豆腐、大根おろし、茶漬、蕎麦、饂飩の類なので、ほとんどその心配がないのが自慢である。

2016/09/14

水曜日

曇り空。気温はそれほど高くないが蒸し暑い。

歸宅して、風呂に入つてから夕食の支度。チリビーンズでワインを一杯だけ。のち、青椒肉絲、茄子の塩揉みに辛子醤油、御飯、オクラの味噌汁。食後にチーズ一切れで、グラスに残つたワイン。

夜は、院生時代に指導教官からもらつたノートの整理をしたり、「人間臨終図巻 4」(山田風太郎著/徳間文庫)を讀んだりで、しみじみと暮らす。

2016/09/13

梅ボシと作家

雨で涼しい。秋雨らしいのだが、予報によれば先にまだ真夏日が何度かあるやうだ。早く冬にならないものだらうか。

歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。チリビーンズで赤ワインを一杯だけ。のち、鯵の味醂干しを焼いて、沢庵、茄子の味噌汁、御飯。

夜は「人間臨終図巻 4」(山田風太郎著/徳間文庫)など。「八十四歳で死んだ人々」の最後は小説家の尾崎一雄(1899-1983)。原稿が書けない時の作家の言い訳にも色々あるが、尾崎は「梅ボシをつけるのもやめてがんばってみたんだが……」と言つたとか。尾崎は小田原に代々續く農家の出身で、梅干を漬けることが何よりも重大な行事だつた。それで駄目ならしやうがない。

また尾崎は四十三歳の時に胃潰瘍で、医者から余命三年と告げられ、五ヶ年計画を立てた。そこから五年以内に死ぬと仮定してあらゆる計画を立てたのである。しかし、尾崎は五年で死ななかつた。そこで五ヶ年計画を更新し、また更新し、また更新し……そして八十四歳の時、急性心不全で死んだ。一ヶ月前には小林秀雄の追悼文を「文學界」に書き、前日の夜までは元気だつた。ある意味、最も幸福な生き方をした人ではないか。

2016/09/12

ハーレム

往きの車中の讀書は「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)の第四巻。「乙女」の帖を終へて「玉葛」に入つた。光源氏は六条の院を造営。四季それぞれを配した庭を誂へた大豪邸、と言ふか、ほとんど一つの町みたいな規模なのだらう、そこに紫の上、花散里、秋好中宮、明石の君を迎へる。

言はばハーレムだが、ハーレムと言ふと私のイメージは、ナスターシャ・キンスキーみたいな美女がわんさかゐる女風呂のやうな感じか、紂王と妲己の酒池肉林の雰囲気なのだが、平安時代の理想のハーレム像はかう言ふしんみりした風情なのだらうか。春の庭の正妻と秋の庭の愛人が、お互ひに歌を送りあつたりね。

歸りの車中の讀書は、「名門」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)を讀み終へたので、またヒルに戻つて、「死の笑話集」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ 1761)。

今日は月に二度の精進日なので、晩餐も肉食と五葷を避ける。高野豆腐とオクラの煮物、茄子の焼きびたしで、冷酒を五勺だけ。のち、昆布だしを薄口醤油と味醂で割つて生姜をおろし、素麺を一把。夜は心靜かに、「人間臨終図巻 4」(山田風太郎著/徳間文庫)を讀んで、この世の無常に思ひを馳せる。

2016/09/11

春は希望の泉

日曜日はいつも讀書と家事、特に料理の仕込み。「名門」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)、「アウグスティヌス/ボエティウス」(世界古典文学全集 26 / 筑摩書房)よりボエティウスの「哲学の慰め」など。夕食は、牛肉とキャベツと車麩の蒸し物で赤ワインを一杯だけ、のち、卵かけ御飯に焼き海苔、茄子の糠漬、大根と糸寒天の味噌汁。夜は、「レッド・ドラゴン」(T.ハリス原作/B.ラトナー監督)を観たり。


2016/09/10

悪魔の階段

今日も真夏日。週末用の簡易版の朝食をとり、家事などをしてから外出。R 大の東京セミナーへ。A 大の T 先生による、「悪魔の階段」を拡散係数に持つ確率微分方程式の性質に就て。

「悪魔の階段」はカントール集合の上だけで増大する関数で、細切れになつた階段関数のやうに見えるのに、実は全ての点で連続になつてゐる。しかし、一様連続でさへあるのに、絶対連続ではない。そんなわけで、連続性の概念をきちんと理解するための例/反例として良く使はれるが、それはさておき、誰がつけたのか、名前がお洒落である。

少し寄り道をしてから帰宅。昼寝ののち夕方までは読書など。風呂に入つてから夕食の支度。いただきものの牛肉を焼いて、ポテト、人参のグラッセのつけあはせ、ワインを一杯だけ。のち、ガーリックライス、若布と胡麻のスープ。

夜は「方丈記」(鴨長明著/簗瀬一雄訳注/角川ソフィア文庫)など。いつ讀んでも、いやもう一言一句がおつしやる通りですね、と言ふ感じ。ショーペンハウアーも書いてゐたが、古今東西の賢人は鴨長明も含め皆、結局は同じことを言ひ續けて來たのであり、衆人はいつの時代にもその逆を行つて來たのである。

2016/09/09

チリビーンズ

今週も色々あつたけど、兎に角、週末に辿り着いた。お湯のやうな空気の中を泳ぐやうにして夕方歸宅。

風呂に入つてから、夕食の支度。正しい作り方なんて知らないので適当にチリビーンズらしきものを作る。パン・ド・カンパーニュを温めてバタを厚めに塗り、チリビーンズを添へて、頃合ひに冷えたビール。ちよつとカイエンヌペッパーを入れ過ぎた氣もするが、自分で作つたとは思へないほど美味しかつた。

そして、チリビーンズ、たつぷりバタを塗つたパン、ビールの三位一体が絶妙。是非、お試しあれ。

2016/09/08

珈琲皿を継ぐ

朝、いつものやうに珈琲を食卓に運ぼうとしたら、接着剤で継いであつた受け皿が割れて大惨事に。後片付けで朝の勉強時間がかなり減つてしまつた。

夕方歸宅して、再び珈琲皿を継ぐ。二十の頃からこのデザインのコーヒーカップが好きで、割つては買ひ替へてゐたのだが、ある時から製造中止になつてしまひ、それ以來、接着剤で継いで大事に使つてゐる。しかしこのあり様では、瞬間接着剤で継ぐのはもう限界かも知れない。

いよいよ金継ぎかと言ふ氣がしたりもするが、そんな高級品でもないので、形あるものは壊れると悟つた方が良いかも知れない。實はカップの方にも大きく罅が入つてゐるのだつた。

2016/09/07

棒ラーメン

蒸し暑い曇り空。 またしても「南からの温かく湿つた空気」だ。いつ秋になるのだろう。早く冬になつて欲しい。と、思ひながら、避暑地や寒冷地の不動産検索をするのが最近の慰め。

夕方退社して歸宅。まづ風呂。湯船の讀書は "The paper thunderbolt" (M.Innes / Penguin). 湯上がりに、塩鯖の酒焼き、胡瓜の酢の物、金時豆の煮物で冷酒を五勺。のち、マルタイの棒ラーメン(葱と香菜と卵)。

夜は「アウグスティヌス/ボエティウス」(世界古典文学全集 26 / 筑摩書房)より、ボエティウスの「哲学の慰め」。

2016/09/06

鯖サンド

今日も夏。思ひ出さへも殘しはしない、私の夏は明日も續く。往きの車中の「源氏物語」は「乙女」の帖。まだ全体の四割の邊りだが、光源氏の次の世代、夕霧たちが物語の主役として登場し始める。

夕方退社して歸宅。風呂に入つてから夕食の支度。鯖サンドでワインを一杯だけ。

夜は「アウグスティヌス/ボエティウス」(世界古典文学全集 26 / 筑摩書房)より、ボエティウスの「哲学の慰め」を讀んだり。

2016/09/05

五番目のコード

また月曜日だ。しかも、真夏日。私の夏は明日も続く。

「五番目のコード」(D.M.ディヴァイン著/野中千恵子訳/現代教養文庫)、讀了。ディヴァインはいつも、クリスティの凡作をリファインしたやうな印象。これは誉めてゐるのである。

「五番目のコード」は、犯人が被害者の側に、棺桶の八つの持ち手(cord)の位置を示すカードを順に置き残して行くと言ふ連続殺人ものだが、良く練られたプロット、丁寧に書き込まれた伏線、「なるほどそうだよね」と言ふ少し意外な犯人が、デイム・アガサを思はせる。

クリスティは確か、「人は酷くではなく少し驚かされることを好む」と言ふやうなことをどこかに書いてゐたはずだが、その感じ。このプロットと犯人もまさにその通りで、普通に考へて説得力のある現実的な「意外な犯人」はこれしかなく、その安心感のある驚きが、まさにクリスティ的。

2016/09/04

日曜日

家事と読書の一日。「五番目のコード」(D.M.ディヴァイン著/野中千恵子訳/教養文庫)、"The Consolations of Philosophy"(A.De Botton / Penguin) より "Not Having Enough Money" など。


2016/09/03

ミス・ピギー

真夏のかんかん照り。これなら昨日、早起きして洗濯する必要はなかつたのだが。午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミ。「確率解析」(重川一郎著/岩波書店)より、重複 Wiener 積分と確率積分の関係。参加者によるゼミ後のランチはインド料理屋にて。

猛暑の中を歸宅。天気予報も修正されて、夏が終るまでにはあと数日かかるやうだ。やれやれ。水分をとつてから、少し晝寢。のち、夕方まで「五番目のコード」(D.M.ディヴァイン著/野中千恵子訳/教養文庫)を讀んだり。

夕方、風呂に入つてから夕食の支度。鯵の味醂干しを焼いて、胡瓜とじゃこの酢の物、御飯、石蓴の味噌汁。

2016/09/02

夏の終り

週末は天気が良くないらしいので、早起きして洗濯。朝食と弁当の支度のあと、ラテン語と線型代數。早起きのおかげでいつもと同じ時刻に出勤できた。

今日も真夏日で蒸し暑い。しかし、この暑さもこれが今年最後になるらしいので、もう真夏の通勤に苦しむこともないのか、と思ふと、やや既に懐しい氣がしたり……は特にしない。むしろ、せいせいする。

夕方退社。氣温は下がつてゐるものの、この湿度の高さはやはり真夏日だ。歸宅して風呂に入つてから、昨日に續き、再度、焼き餃子でビール。「キリン秋味」。さらに最後の夏を惜しむため、キャベツたつぷりのソース焼きそばを作る。


2016/09/01

夏と餃子とビール

夕方、神保町に用があつたので、その後、お土産に餃子を買つて帰る。もう日は暮れてゐるのに、蒸し暑い。また夏に戻つたやうだ。予報によれば、明日もまだ夏とのこと。

歸宅して風呂に入つてから、焼き餃子でビール。やはり夏は餃子でビールだ。體にはあまり良くないやうな氣はするが。さらに、汁気多めの肉野菜炒めものかけ御飯。ドットーレ・コグレによれば、本物のタイ料理とは汁気多めの炒めものかけ御飯と見つけたり。まさに、その通りであろう、と思ふ夜。

餃子とビールのせゐか、金曜日の夜のやうな錯覚に陥る。いや、もう一日あるのだ。頑張りませう。