「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/01/31

「復活の日」

8 時まで寝てしまった。休日用の簡易的な朝食。家事少々のあと、朝風呂の湯船で「ルー・サンクション」(トレヴェニアン著/上田克之訳/河出文庫)を読む。昼食はかけ蕎麦。卵と刻み葱と、天麩羅屋でもらった揚げ玉。午後も家事と読書の続き。「ルー・サンクション」、読了。基本的には 007 的なスパイものなのだが、シニカルで知的で反社会的で、トレヴェニアン・タッチ。

夕方になって再び風呂に入ってから夕食の支度。若布と大豆の酢の物、豚肉の漬け焼き、キャベツの千切り、切干し大根と葱の味噌汁。

夜は「復活の日」(小松左京著/ハルキ文庫)を読む。小松左京の作品は一冊も読んだことがなかったのだが、同僚がこの「復活の日」を何度も読み返したと話していたので。それにインフルエンザが流行中の今、読むと味わい深いかも知れないし。ウィルス兵器による人類絶滅テーマ SF の古典で、今から五十年以上も前に書かれている。

2016/01/30

「ルー・サンクション」

いつものように 6 時前に目が覚めてしまった。どうやら東京は雪にならなかったようだ。ヨーグルト、珈琲、パンとチーズ、野菜ジュースの休日用簡易版朝食。朝風呂に入ってから、午前中は読書と家事。一週間分のおからを煮る。昼食はお好み焼きでビール。昼間に飲む酒は美味しい。ビールとかスパークリングワインとか、泡の出るものはことさらに思えるのだが、気のせいだろうか。

午後も、ミルフィーユ的(?)蒸し豚を仕込んだりの家事の他は、ゆっくりと「ルー・サンクション」(トレヴェニアン著/上田克之訳/河出文庫)を読む。トレヴェニアンの作品の中で最も知名度が低い作品だろう。私も最近まで知らなかった。映画化もされた「アイガー・サンクション」の続編で、書く度に作風を変えるという定評の(私はそうは思わないが)、唯一の例外。主人公の造形が気に入ったのは確かだろうが、この二作を書いてシリーズものに見切りをつけたという可能性もある。

夕方、再び風呂にはいって後、「ルー・サンクション」を読みながら酢大豆でワインを少々。いい土曜日だ。その間に、豚肉とブロッコリを蒸す。さらに、蒸し豚から出たスープを使って、うどん。

2016/01/29

干物

奇特な御仁が、田舎から魚あれこれの干物を送って下さるとのこと、今夜は素敵な用がなくもなかったのだが、19時-21時の指定時間に自宅で荷の到着をお待ち申し上げた。

届いたのは段ボール箱一杯の大量の干物であった。判子を押している段階から、凄い勢いで猫が寄ってくる。こんなに大量にどうしたらいいのか、しばし呆然としていたが、味のことはさておき冷凍するしかない、という結論に逹した。とりあえず、数日で食べられそうな分だけは冷蔵して、その他を全部一匹ずつラップに包み、冷凍庫に片付けた。

今、冷凍庫の半分くらい干し魚である。

2016/01/28

卵雑炊

今日は天気も良く、気温もかなり上がった。朝の車中の読書は谷崎源氏。帰りの車中の読書は「パピヨン」(H.シャリエール著/平井啓之訳/河出文庫)。明日は雨になるらしいので、今日のうちに花屋に寄り道しておく。百合と迷ったが、薔薇(ソルベット・アバランチェ)。

帰宅して風呂。湯船の読書は「新・大貧帳」(内田百閒著/福武文庫)。湯上がりにおからで冷酒を五勺。のち、卵雑炊を作って食す。おいしい。

2016/01/27

猫納豆プロジェクト

この前の週末にふと、猫の体温で納豆が作れるのではないか、と思った。猫が納豆を抱えて温めてくれるようなイメージだったのだが、猫に言うことをきかせるのは難しい。結局のところ、猫用ホットカーペット(電気座布団の転用)で保温するのに等しい感じになってしまったが、とりあえず、きちんと納豆はできた。納豆菌はかなり強力なので、特に気を使わなくても、難なくできてしまうものらしい。

コスト面からすると、大豆が一食あたり 10 円程度のようだが、プラス(私の)人件費、プラス猫件費ということになり、手作りすることがリーズナブルなのかどうか微妙な線。

ちなみにこれでちゃんと温度管理をして最適化するなどすれば、IoT でもあり、データサイエンスでもあり、バイオでもあり、しかも猫、という最強のビジネスプランになるような気もするのだが、猫を一万匹単位で集めるのは困難なのでスケールに課題がある。


2016/01/26

宇治十帖

どこかで事故があったらしく電車がいつもより混んでいる。谷崎源氏は「竹河」より「橋姫」の帖へ。夕方からのミーティングが長引いたので、退社がかなり遅くなった。帰りの車中の読書は「大脱走」(P.ブルックヒル著/工藤政司訳/ハヤカワ文庫)。読了。映画もいいけど、原作も傑作。明日からは「パピヨン」(H.シャリエール著/平井啓之訳/河出文庫)を読む予定。

帰宅して、おからで冷酒を五勺。今日もおからに辿りついた、と、ほっとする。


2016/01/25

おからと蕎麦

オフィスで風邪が流行中のようだ。帰宅して、まず風呂。湯船の読書は「新・大貧帳」(内田百閒著/福武文庫)。湯上がりには、おからで酒を五勺。最近は毎日、おからで晩酌なのだが、毎日同じというところに味がある。

百鬼園先生は何年もの間、毎日お昼が盛り蕎麦の時期があったようで、それも家の近所の特にうまくもない普通の蕎麦屋から出前をとる。先生が言うには、「続けて食ってゐる内に段々味が決まり」、うまくなってくるそうだ。「うまいから、うまいのではなく、うまい、まづいは別として、うまい」らしい。毎日、決まって同じ蕎麦を食べるのが楽しみになってくると言う。砂場とか更科とかうまい蕎麦屋があるではないかと言う人もいるが、そういう、うまい蕎麦は、ふだんと違うから、まづいのだ、と言う。確かどこかで、酒のことだったと思うが、あれはうまいからまづい、とお書きになっていたようにさえ思う。


やはり味わいというものはこの境地にまで行かないといけないな、と思いながら、今日もおからで盃を傾ける。おからも百鬼園先生の好物で、先生はお酢やレモン汁をかけて食すことを好んだようである。幸いにも、近所の豆腐屋でおからを買ったら、袋に一杯、一ヶ月は楽々食べられそうな量が 80 円だった。この先一ヶ月は毎晩、おからである。

2016/01/24

「直線」

寒波襲来で大荒れの天気、東京でも雪かも、という予報だったが、少し気温が低い程度の晴天。老猫と老人が互いの体温で暖をとりながら、読書などで過す日曜日。

「直線」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)の続きを読む。読了。中期以降に書かれたもののうちでは傑作かも。(いつものことながら)競馬騎手の主人公が、準宝石の輸入会社を経営していた兄の急死によって、突然、会社を受け継ぐことになる。当然、宝石にも経営に全くの門外漢だし、兄のこともほとんど知らない。兄が巻き込まれた宝石がらみの犯罪の謎を解くことで、疎遠だった兄のことも次第に理解していく、しかしその兄はもういない……という設定がうまい。

2016/01/23

寒波、おでん、燗酒

ようやく冬らしくなってきたかな。朝食は休日用の簡易版。ヨーグルト、珈琲、ジュース、パンとチーズ。朝風呂に入って、湯船で「直線」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)を読み始める。午前中は「直線」の続きなど。

昼食にお好み焼きを作って食べてから外出。R 大の東京オフィスでセミナに参加。「化学メイカーで使われる数学」。回帰の実験計画の最適化にグレブナー基底の理論が使える、というお話だったと思う。終わって外に出ると、かなり寒い。帰宅して午後も読書などしてのんびり過す。

夕方、再び風呂に入ってから夕食の支度。昨日のおでんの残り。茹で卵と牛筋を追加。酒を燗で五勺ほど。おでんもこの冬で初だし、燗酒も初。なかなかよいものだ。のち、山葵丼と里芋だけの豚汁。

夜は D.フランシス「直線」、「御馳走帖」(内田百間著/中公文庫)など。

2016/01/22

お精進と祖母の思い出

百間先生に習って私も「お精進」の日を設定しようと思った。いきなり月に三日は多過ぎるので、まずどこか一日だけをお精進としよう。何日が良かろうかとしばらく悩んで、母方の祖母の命日に決めた。しかし、命日を覚えていない。こういう時に便利なことに毎日、ブログを書いている。検索してみると果たして、祥月命日が判明した。

思えば、昔はなかなか味のある文章を書いていたのだなあ、と「2003年の北野ホテルにて」に思う。しかし、読み手を感心させてやろう、趣味の良さを見せてやろう、というスノッブさがうかがわれ、今思えば恥ずかしいものである。青春は赤恥とは良く言ったものだ。今の私は、こんな風にことさら仕業した文章を書かない。

2016/01/21

「御馳走帖」

永らく、食に関する本で何度読み返しても面白いのは子母澤寛の「味覚極楽」にとどめをさすと思っていたのだが、最近の私には内田百間の「御馳走帖」の方が面白い。結局、いくら名聞き書きで、いくら味があると言っても、まあ、「味覚極楽」は有名人各々の自慢噺のようなものであって、百鬼園先生の自由闊達さには及ばない。

とか言って、またしばらくすると、食の本は開高健の「開口閉口」に限る、などと言い出しかねないので、今のところは、に過ぎないのだが。

夕食には、おからの煮物でワインを少々飲み、そのあとは、豚肉の漬け焼きと生キャベツの千切り、黒米入りの御飯、大根の漬物、豚汁。

2016/01/20

収容所でのコンパスの作り方

ようやく冬らしい寒さになってきたかな。往きの車中の谷崎源氏は「竹河」の帖。最近の帰りの読書は「大脱走」(P.ブルックヒル著/工藤政司訳/ハヤカワ文庫)。メインは収容所から脱走するためのトンネル掘りなのだが、計画を側面から支える細かい作業が面白い。例えば、証明書の偽造とか、細々した小道具の作成とか。

例えば、コンパスは以下の如し。壊れたレコードを加熱変形させてケースを作る。そこに、円形に切り抜いたボール紙に正確に目盛を描いたものをはめこみ、蓄音機の針を中心に刺す。方位磁針には縫い針を使い、その針の中心に軸受けを半田付けするのだが、その半田は牛肉の缶詰の空缶についているものを溶かして用いる。松脂は松林から入手したり、兵舎の板材ににじみ出たものを使ったりする。なんてことが、詳しく書かれている。まさに必要は発明の母、というか、捕虜収容所のようなところでも思いもかけないようなものが作れてしまうのだなあ、と、人間の創意工夫に感心する。

少し早めに退社して、神保町にて私用を一つ片付ける。古本屋でシムノンのメグレものなどを物色してから帰路につく。夕食は豚肉と油揚げと白菜の鍋。あとは饂飩。

2016/01/19

お精進

いつもと同じ時間なのに妙に通勤電車が空いている。昨日の反動だろうか。とは言え、座れるわけではないのだが。往きの車中の谷崎源氏。「紅梅」から「竹河」の帖へ。

今日は色々と忙しく、帰宅は今。夕食もミーティングの合間に学生食堂で「カレーライスS」だった。これから風呂に入って、湯船で「御馳走帖」(内田百間著/中公文庫)でも読もう。

「御馳走帖」の「謝肉祭」という一編に、百間先生は毎月、八日と十七日と二十一日の三日を「お精進」と勝手に定めて、肉や魚を断っている、という話がある。もちろん先生のことだから、面白半分で特に意味はないのだが、それが段々と真面目に面白くなってくるわけである。お精進の翌日は「精進落ち」なので大っぴらに御馳走を食べる。これがまた楽しそうだ。百間先生はお精進の前日も御馳走にしようと言う。月に三日、いや六日、あるいは九日かも知れないが、沢山楽しい日が出来る。真似してみたい。

2016/01/18

おからと百鬼園先生

雪で地下鉄も各駅で時間調整、オフィスにつくまでかなり時間がかかった。おかげで谷崎源氏が進んだ。「匂宮」から「紅梅」へ。

夕方退社。雪はほとんど消えている。これなら明日の朝、道路が凍り付くということもなさそうだ。帰り道に豆腐屋でおからを買って帰宅。風呂に入ってから夕食の支度。鰯の梅煮、きのこの和風マリネ、切干し大根とじゃこのポン酢で、冷酒を五勺。のち、山葵丼、油揚げと長葱の味噌汁。

晩酌に、買ってきたおからを煮て、「御馳走帖」(内田百間著/中公文庫)を読みながら、白ワインを少々。いい夜である。

2016/01/17

カレー饂飩

7 時過ぎに起き出して、休日の簡易的朝食。午前中は、風呂と、切干し大根を煮たり鮭を焼いたりの家事と、読書。「生き方と哲学」(鬼界彰夫著/講談社)。

昼食はカレー饂飩。カレー饂飩は、長葱の青いところ、油揚げ、卵の三つがうまいと思う。ビールも追加。それはさておき、カレー饂飩とは奇妙な食べ物だ。その創意工夫に感心する。これに匹敵する謎の日本食と言えば、焼きそばパンくらいだろうか。

午後は一週間分の家事と、読書。「大脱走」(P.ブルックヒル著/工藤政司訳/ハヤカワ文庫)など。スティーブ・マックイーンなどが主演した有名映画「大脱走」の原作。

夕食は、鰯の梅煮、大根の漬物、豚汁。夜も読書など。「大脱走」の他、「荘子」(金谷治訳註/岩波文庫)の第四冊。

2016/01/16

鰯と花

休日なので朝食はヨーグルト、パンとチーズ、珈琲だけ。午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミに出かける。参加者によるゼミ後のランチは、てんぷら。揚げ玉をもらって帰る。帰り道のスーパーで鰯を三匹、花屋で花を買って、帰宅。

午後は豆を煮たりの家事の他、読書など。夕方風呂に入ってから夕食の支度。鰯をさばいて刺身をつくり、冷酒を五勺。のち、ひじきと梅干しとじゃこの炊き込み御飯、卵焼き、大根の漬物、豚汁。

夜の読書は「生き方と哲学」(鬼界彰夫著/講談社)、「荘子」(金谷治訳註/岩波文庫)の第四冊など。

2016/01/15

金曜日

行きの通勤車中の谷崎源氏。「匂宮」の帖。中心人物は光源氏の孫の世代に。

夕方退社して、本郷で一つ用事を片付けてから、徒歩で帰宅。さて今週も無事に週末に辿り着くことができてなにより。風呂に入って、湯船で "Different Seasons"(S.King / Signet)より "Rita Hayworth and Shawshank Redemption".

2016/01/14

雲隠

朝の通勤車中の谷崎源氏。「幻」から「雲隠」の帖へ。「雲隠」はタイトルだけあって本文がない帖。次の「匂宮」の帖に入ると、「幻」から八年が経過して、その間に光源氏が死去したことになっている。主人公の死を描くべき一章が表題以外まるごと省略されてしまっているのだ。しかも、そのあと物語はまだまだ続く。世界最古の小説に対して言うのもおかしいが、斬新。

夕方に外でミーティングがあったので、終了後、そのまま帰路につく。帰宅して風呂に入ってから夕食の支度。ちょっと遅くなったので、黒米入りの御飯と生キャベツにレトルトのカレー。赤ワインを少々。

2016/01/13

墨染の桜

谷崎源氏で浮世の無常を味わいつつ、出勤。「心あらば」の一言だけで古今集から陰に引用されている「深草の野辺の桜し心あらばことしばかりは墨染に咲け」にじーんとしたり。墨染に咲け、かあ……そういう心持ちがする春もあるよね。

夕方退社。帰宅してまず風呂。湯船の読書は "Different Seasons"(S.King / Signet)より "Rita Hayworth and Shawshank Redemption". 英語の本は読むのに十倍くらいの時間がかかるので、短篇でもなかなか読み終わらない。

夕食の支度。おからの煮物、きのこの和風マリネで冷酒を五勺。のち、豚肉の味噌漬焼き、キャベツの千切り、切干し大根の味噌汁。

2016/01/12

ぼちぼちでんな

朝の通勤車中の谷崎源氏は、「御法」から「幻」の帖へ。紫の上の葬儀が行われ、光源氏の死去も近い。「御法」から「幻」のあたりは物語の中で最も無常感の強いところだろう。

連休明けだからか、ばたばたしている内に一日が過ぎた。ミーティングで思ったのだが、「調子はいかがですか」と訊かれると状況がどうあれ「ぼちぼちです」と反射的に答えてしまう。関西人の性なのだろうなあ。

少し遅くなったので、帰宅してすぐに夕食の支度。おからの煮物、きのこ類のマリネで冷酒を五勺。水炊き鍋、のち饂飩。

これから "Different Seasons"(S.King / Signet)を持ってお風呂。

2016/01/11

ショーシャンク・リデンプション

朝食の納豆定食のあと朝風呂。湯船で "Different Seasons"(S.King / Signet)より "Rita Hayworth and Shawshank Redemption" のつづきを読む。このタイトルの "redemption" の語が絶妙で、翻訳者泣かせだな、と思う。「ゴールデンボーイ」(S.キング著/朝倉久志訳/新潮文庫)所収の翻訳タイトルは「刑務所のリタ・ヘイワース」、映画化 "The Shawshank Redemption" の邦題は「ショーシャンクの空に」となっていて、どちらも "redemption" を無理に訳さないことを選んでいるのだが。

そう言えば、「ゴールデンボーイ」も原題の "Apt Pupil" を直接に訳するのを諦めたパターンだが、こちらは作品の内容をうまく汲み取った邦題だと思う。

昼食には、一銭洋食焼き的なものを作ってみた。具は卵の他に、刻み葱、じゃこ、干し海老、鰹節。ソースは醤油とオイスターソースと酒と一味で適当に。一銭が今の物価でどれくらいなのか分からないが、これだと材料費は 50 円くらいだろうか。午後も読書などでのんびり過す。

夕食は水炊き鍋を自家製ポン酢にて。あとは饂飩。実家で分けてもらった乾麺の三輪うどん、うまい。夜は読書の他、包丁研ぎなど。

2016/01/10

「完全脱獄」

また 8 時過ぎまで寝てしまった。平日は 6 時に起きているので、明日のうちに調整しないと。ヨーグルト、珈琲、パンとバタなど、休日用の簡易朝食。朝風呂に入って、湯船で「完全脱獄」(J.フィニイ著/宇野輝雄訳/ハヤカワ文庫)を読む。

フィニイと言えば「盗まれた街」や、ロマンティック・タイムトラベルSF(そういうジャンルがあるとすれば)の代表的短篇「愛の手紙」などが有名だが、こんな作品も書いているとは知らなかった。ちょっと前に「十三号独房の問題」(J.フットレル)を研究しているときに監獄ものミステリを調べていて行き当たったので、読んでみた。

読了。サンクエンティン刑務所に収監された男が、弟の協力を得て脱獄しようとする話。脱獄方法自体にはさほど面白みがないし、不自然なところもあり、ミステリとしてはもう一つ。苦い結末に味があるが全体を引き締めるほどの効果を発揮していないのは、おそらく短編を長編に書き直したからだろう。

昼食は菠薐草の胡麻和え、白菜の浅漬、塩鮭、黒米入りの御飯、えのき茸と葱の味噌汁。午後も読書と、一週間分の家事あれこれ。夕食はピエンロー。塩は瀬戸内の藻塩。素晴しくうまい。青木正児「酒の肴」に「げに塩は食肴の将である」とあるのはこのことであったか。白ワインを少々。あとは雑炊。白菜の浅漬と。

夜の読書は、「荘子」(金谷治訳註/岩波文庫)の第二冊から第三冊へ、他に脱獄つながりで  "Different Seasons"(S.King / Signet)より "Rita Hayworth and Shawshank Redemption" など。今日も良い一日だ。

2016/01/09

食材の整理

8 時近くまで寝てしまった。ヨーグルト、珈琲、パンとバタの簡易的朝食のあと、朝風呂の湯船で「人間滅亡的人生案内」(深沢七郎著/河出文庫)を最後まで読む。いやあ、笑った。傑作だ。

午前中は、昨日大量に(300円ほどで)仕入れた半端もののしめじとえのき茸を小分けにして冷凍したり(一ヶ月分はありそうだ)、「すてきな奥さん」的に食材や乾物を整理しているうちに過ぎた。昼食は金ちゃんラーメン。袋書きの通り、あり合せの野菜で。午後も家事など。

夕方また風呂。湯船で「完全脱獄」(J.フィニイ著/宇野輝雄訳/ハヤカワ文庫)を読み始める。夕食の支度。筑前煮とおからで冷酒を五勺。のち、豚肉の味噌漬焼きとキャベツ千切り、大根の漬物、しめじの味噌汁。ちょっと今日は食卓が贅沢過ぎるな。

2016/01/08

「人間滅亡的人生案内」

昨日、人の波が戻ってきたと思ったものだが、今日こそ本格的に戻ってきた。車中の読書は谷崎源氏、「御法」の帖。紫の上が死去。秋風にしばしとまらぬ露の世をたれか草葉のうへとのみ見ん、か……と無常を感じながら、出社。

夕方退社。帰宅して風呂。湯船の読書は「人間滅亡的人生案内」(深沢七郎著/河出文庫)。すごい。久しぶりに声をあげて笑った。無情を通り越した非情の世界とも言うべき、すがすがしい人生案内である。雑誌「話の特集」で連載されていた人生相談を書籍化したものだが、よくこれが連載できていたものだ。重ねて言うが、すがすがしい。「老子」にある「天地ハ仁ナラズ、万物ヲ以テ芻狗ト為ス。聖人ハ仁ナラズ、百姓ヲ以テ芻狗ト為ス」という言葉に似た、すがすがしさである。

2016/01/07

ミニカレー

朝の通勤電車にもすっかり人の波が帰ってきたなあ……車中の読書は谷崎源氏。「夕霧」から「御法」へ。

夕方のミーティングのため夕食が遅くなりそうだったので、その前にオフィスの前の研究所の学食でカレーライスS(240円)。そう言えば、三十年くらい前、私が学生だった頃、学食の「ミニカレー」というメニューに大変お世話になったなあ、と思い出した。ミニと言いつつ、私の目には普通のサイズのカレーライスで、やはり 200 円くらいだったような。それはさておき、学食のカレーの味って昔から 1 ミリも変わっていない。

2016/01/06

菰樽

そろそろ朝の通勤電車も平常の混み方かも。

夕方のオープンスペースで、親会社が新年最初の全体会議用に鏡開きの準備をしていた。菰樽を開けるのが大変な苦労であるようだ。木槌であっちを叩いてみたりこっちを叩いてみたりで、相当の時間がかかっていた。酒樽なんて滅多に開けないものなあ。

帰宅して、夕食の支度。高野豆腐と卵の煮物、塩鯖の酒焼きで冷酒を五勺。塩鯖自体が美味しいものだが、ちょっと酒に漬けてから焼くと非常にうまい。のち、山葵丼、しめじと若布の味噌汁。

夜の読書は、「荘子 第二冊(外篇)」(金谷治訳註/岩波文庫)など。

2016/01/05

田作り

朝の通勤列車も今日になると人の波が戻ってきたようだ。普段よりちょっと空いているのは、まだ松の内だからか。

夕方退社。帰宅して風呂に入ってから夕食の支度。田作り、卵焼きで冷酒を五勺。のち、蕪の葉とじゃこのふりかけ御飯、切干し大根の味噌汁。御節料理の残りばかり食べていたら、乾物くらいしか食材がなくなっていたのだ。田作りだけは作り過ぎたため、まだ沢山残っている。

夜は心静かに、「荘子 第二冊(外篇)」(金谷治訳註/岩波文庫)など。

2016/01/04

仕事始め

四日が仕事始めとはせわしないことだ。やはり、通勤の電車はかなり空いていた。往きの車中の読書は谷崎源氏、「夕霧」の帖。冬休みの間が空いたので、内容を忘れていて、ここで誰の葬儀をしているのだか、しばらく思い出せなかった。そうそう、落葉の宮の母、御息所だった。ほんの十日ほど前に読んだことも忘れているとは困ったものだ。

夕方退社。帰りの車中の読書は「古書奇譚」(C.ラヴェット著/最所篤子訳/集英社文庫)。帰宅して風呂に入ってから夕食の支度。母の手製の大根の漬物や、御節の残りの蒲鉾などで冷酒を五勺。のち、ミニ親子丼。今日もとりあえず家に帰って、杯を傾けられた。最近、数日前のことは忘れてしまうので、特に悩むこともない。ありがたいことである。困ったことなのかも知れないが。

晩酌しながらの夜の読書は、「荘子 第二冊(外篇)」(金谷治訳註/岩波文庫)。

2016/01/03

初芝居

昨夜 TV で中継を観たのだが、やはり初芝居は厄払いの縁起ものだから、と思い、夕方から歌舞伎座に出かける。いただきもののカップ酒の賀茂鶴を魔法瓶に詰め、御節の残りがお弁当。

「壽初春大歌舞伎」、夜の部。「猩々」、「二条城の清正」、「廓文章」、「雪暮夜入谷畦道」。「廓文章」の伊左衛門を鴈治郎、夕霧を玉三郎は、華やかで目出たく、お正月らしい。私は関西人だからか、結局のところ、上方和事が好き。以前に観た片岡孝夫(仁左衛門)のしゅっとした美形の伊左衛門も良かったが、こういうぽってりした役者が演じる方があほぼん的な味わいが立って良いかも。「総身が金」の台詞もより生きるのでは。

良い初芝居だった。これで厄も祓えたに違いない。こんなポンコツな私にも、今年は良いことがありますように。さて明日から仕事の始まりだ。

2016/01/02

正月二日

昨夜はかなり早く床に入ったのだが、8 時まで寝てしまった。簡単な朝食。もうあと二日で休みも終わりなので、どうしたものかと考えるも、人間が安上がりにできているので、実家からもらってきた御節の残りで安酒を飲み、本を読み、TV で初芝居の中継を観ることくらいしかない。

「顎十郎捕物帳」(久生十蘭著/朝日文芸文庫)を「両国の大鯨」から最後の「かごやの客」まで。読了。「両国の大鯨」は見世物小屋から巨大な鯨があっと言う間に盗まれるという話だが、"How" よりも "Why" の方に重点が置かれているところなど非常にモダンである。続いて、「古書奇譚」(C.ラヴェット著/最所篤子訳/集英社文庫)を読み始める。

夜は御節の残りや黒豆でロゼのスパークリングを飲みながら、TV の初芝居中継。

2016/01/01

年越し

大晦日に和歌山の実家に帰って、年越し蕎麦。一夜明けて元旦にお屠蘇と御節と雑煮を食べ、早い昼食に海苔巻、稲荷寿司、茶碗蒸しを食べて、実家を出る。夕方、小石川に着。

短かい帰省の間に、「エマ」(オースティン著/阿部知二訳/中公文庫)を読了。ちょっと好きになれそうにないタイプの主人公像と、微妙に意地悪で皮肉な描写がいい。BBC Radio4 の "In Our Time" の "Emma" の回で話題になっていた、「スミス嬢?」のくだりや、「サリーはイングランドの庭園ですものね」など、なるほどこのことかと楽しめた。どちらかと言えば「高慢と偏見」の方が、小説として締まっている感じがして好みだが、これも傑作。

他に「顎十郎捕物帳」(久生十蘭著/朝日文芸文庫)。十蘭はどれもいいが、顎十郎は何度読み返してもいい。凝りに凝り抜いた感じと同時に、とぼけた風情もあって、十蘭の短編小説の中でも独特の味わいがある。