「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2012/11/24

「細雪」新潮文庫版

いくらでも眠れるよ。もう来年まで冬眠したい。 いつもの朝食を済ませて、東京駅に向かう。 デリバティブ研究会自主セミナに参加。 セミナ後のいつもの「ランチセッション」のあと、 今回はさらに、丸の内ホテルのフレンチレストランでお茶をいただき、 うーん、丸の内OLのような午後。 帰宅して、昼寝しようにも、もう夕方が近いので、 何とはなしに「細雪」(谷崎潤一郎著/新潮文庫) を読み始める。

文庫本の「細雪」には中公文庫版と新潮文庫版があり、 一巻にまとまっていて便利で安いのと、雰囲気の良い挿絵が入っていることから、 中公文庫の方が人気があるみたい。 でも、私は三分冊の新潮文庫版の方が好きだ。 今の新潮文庫は字が大きくなって老眼に優しいこともあるが、 無駄に詳しい注釈が面白い。

「無駄に」と言ったのは、 「長襦袢:和服の下着。」とか、 「警句:着想が奇抜で、辛辣に真理を言い表した簡潔な表現の文句。」 などと言う、 読者を侮っているのかと思わざるを得ないような項目にまで注釈があるからだが、 おおむね、どの注釈もなかなか面白い。 例えば、当時にピアノがどれくらい贅沢品だったか(項目「ピアノ」)、とか、 関東大震災のあとに東京の女学生の間で人形の作成が流行した(項目「人形」)、 などの注釈は、ちょっとした風俗史として楽しめる。 また、 「職業婦人:当時、良家の女性は家事・育児に専念するのが当然とされ、 職業を持つのは、貧乏なためにやむを得ずする恥かしい事と考えられていた。」 なんて項目も楽しい。

昔の関西には、東京から見て、ちょっとしたエキゾチズムとともに、 憧れるに値する独特の文化と豊かさがあったわけだが、 今はどうなのかなあ、としみじみ思ったりする夜。