三月末日付けのつもりだつたのだが、今日の取締役会議と株主総会で、私の代表取締役からの辞任を承認してもらつた。その代はりと言ふわけではないが、若いエンジニア三名に新しく取締役になつていただけた。やはり若い人たちにどんどん自由に活躍してもらひたい。孔子の氣持ちが分かるわけではないが、「後生畏ル可シ」と言つたときには、若者の皆が自分を越えるやうであつて欲しい、と願つてゐたのではないか。
そして私自身もかなり自由になつたので、この二年余りに乾杯。
大体、構想に二年、伏線を引くのに一年、実施に數ヶ月と言ふところのプロジェクトだつた。カウントダウン画像は今日で最後。これまでについては ``z" ラベルで参照のこと。
「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。」
「論語」微子、第十八、六
2017/03/28
2017/03/26
2017/03/19
2017/03/12
2017/03/05
2017/02/26
2017/02/19
2017/02/12
7×7=49
休日用の手抜き洋風朝食を済ませたあと、朝風呂。午前中は所得税の確定申告書の作成。晝食は昨日の十目焼きそばの材料の殘りの烏賊や海老を使つて、いつもより贅沢なお好み焼きでビール。食休みのあと午後は、PC 類の廃棄、口座の整理の他、家事をあれこれ。
夕食の支度。冷奴、烏賊と筍と絹莢ともやしの塩炒めで、リースリングを一杯だけ。のち、豚肉の生姜焼き、押し麦入りの御飯、豚汁。食後に包種茶。夜は心靜かに「荘子物語」(諸橋轍次著/講談社学術文庫)を讀んだり。
2017/02/05
2017/01/29
ハードボイルド
七時起床。一週間分の家事の合間に、讀書をしたりスケッチをしたりの一日。生まれてから半世紀ほど、絵なんてほとんど描いたことがなかつたので、何もかもうまく出來ないし、何をどうしたら絵になるのか謎だらけで楽しい。人に教はつたり本で勉強したりすると、すぐ上手になつてしまつて面白くないので、独りで探求を續けたい。
朝食はチアシード入りのヨーグルト、パン、茹で卵、珈琲。晝食は砂肝と長葱の大蒜炒めでリースリングを一杯ののち、鶏南蛮蕎麦。三時にチョコレートとバナナのペイストリと珈琲。夕食はココナツミルクベースの海老カレーとビール。
これから「古典芸能への招待」で厳島観月能を観てから就寝予定。さて、明日からまた一週間だが、せめて今は穏やかな気持ちでゐよう。
2017/01/22
「野獣死すべし」
休日用の簡単な朝食。三十分ラテン語の勉強をしてから、朝風呂。そのあとは家事とその合間の讀書の一日。珈琲豆を切らしてゐて、三日ぶりに珈琲を飲んだら、物凄く美味しかつた。しかも飲んだ後、三十分くらい頭が妙に冴えてゐた。一日最大でも三杯に止めているのだが、カフェイン中毒なのだらう。禁酒日の前に、禁珈琲日を週に一日くらゐ作るべきかも。晝食は焼きそばとビール、夕食は出來合ひの豚カツでカツ丼と沢庵、毛蟹の殻でだしをとつた味噌汁。
「野獣死すべし」(N.ブレイク著/永井淳訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)、讀了。古典的名作だが、やはり良くできてゐるし、モダンでもある。前半が殺人計画を実行しようとする男の視点での手記、後半は黄金期ミステリらしいスノッブな名探偵が登場しての第三者視点という対照的な構成が、物語の内容と本質的に関係してゐるところが、今讀んでも新しい。
二部あるいは三部構成で語り手や視点を切り替へるミステリ作品はしばしばあるが、その構成を自然に見せることが難しい。また、ミステリである以上、作者の企みが何かあるぞと讀者は身構へて讀む。そして、もちろん企みがあるので、作者としてはさらにハードルが高くなる。その意味で、なかなかこの作品ほどうまく処理できないものだ。
2017/01/15
クリスピンと田村隆一
また 8 時まで寢てしまつた。明日から 6 時に起きられるだらうか。休日の簡易的朝食のあとラテン語の勉強を少し。家事と讀書の一日。「田村隆一 ミステリーの料理事典」(田村隆一著/三省堂)、「愛は血を流して横たわる」(E.クリスピン著/滝口達也訳/創元推理文庫)など。晝食はお好み焼きとビール、白菜の漬物とハム。夕食は鶏肉と長葱と春菊の小鍋立てなどで熱燗を五勺ほど。
「愛は血を流して横たわる」、讀了。いかにも英国派のユーモアあり教養ありの、折り目正しい古典的ミステリ。上品で温かくも、てきぱきとした展開は讀み易く、だれさうなところはサスペンスで引き締められてゐて、一息に讀める。強ひて言へば、犯人に意外性がなく、解決編がややくどいか。
「田村隆一 ミステリーの料理事典」は料理の本では全くない。早川書房創業期の編集者、翻訳家、詩人の田村隆一が、料理に喩えてミステリに就て書いたエッセイ集。特に第 1 章の思ひ出話が面白く、各節冒頭に何故か昭和二十九年初頭にあつたことを箇条書きにしてゐるのも樂しい。例へば、「二月十三日 植草甚一氏訪問 "Moving Toyshop" の翻訳をお願いする」とか。この "Moving Toyshop" とはクリスピンの「消えた玩具屋」である。當時、植草甚一は井の頭線の池ノ上駅近くの学生下宿で四畳半二間の貧乏暮らし。毎朝、昨晩の残りをチャーハンにして食べてゐた、とか。
田村隆一は同書で、好きなミステリ作品の一つにクリスピンの「消えた玩具屋」を挙げてゐる。クリスピンをパブから生まれたユーモア文學と言ふ枠組みで解説し、さらには、パブは日本で言へば銭湯だ、日本で最初に銭湯を経営したのは福沢諭吉だ、と言ふ調子で脱線して行くのが愉快。
「愛は血を流して横たわる」、讀了。いかにも英国派のユーモアあり教養ありの、折り目正しい古典的ミステリ。上品で温かくも、てきぱきとした展開は讀み易く、だれさうなところはサスペンスで引き締められてゐて、一息に讀める。強ひて言へば、犯人に意外性がなく、解決編がややくどいか。
「田村隆一 ミステリーの料理事典」は料理の本では全くない。早川書房創業期の編集者、翻訳家、詩人の田村隆一が、料理に喩えてミステリに就て書いたエッセイ集。特に第 1 章の思ひ出話が面白く、各節冒頭に何故か昭和二十九年初頭にあつたことを箇条書きにしてゐるのも樂しい。例へば、「二月十三日 植草甚一氏訪問 "Moving Toyshop" の翻訳をお願いする」とか。この "Moving Toyshop" とはクリスピンの「消えた玩具屋」である。當時、植草甚一は井の頭線の池ノ上駅近くの学生下宿で四畳半二間の貧乏暮らし。毎朝、昨晩の残りをチャーハンにして食べてゐた、とか。
田村隆一は同書で、好きなミステリ作品の一つにクリスピンの「消えた玩具屋」を挙げてゐる。クリスピンをパブから生まれたユーモア文學と言ふ枠組みで解説し、さらには、パブは日本で言へば銭湯だ、日本で最初に銭湯を経営したのは福沢諭吉だ、と言ふ調子で脱線して行くのが愉快。
2017/01/08
初芝居
水筒に「超群」純米吟醸をつめ、黒豆の五目煮を包んで、歌舞伎座へ。「壽 初春大歌舞伎」晝の部を観劇。初芝居は縁起物。
真山青果作の「将軍江戸を去る」。今年は大政奉還から百五十年らしい。徳川慶喜に染五郎、山岡鉄太郎に愛之助。昨年の「元禄忠臣蔵」で真山青果に感心したので今回も樂しみにしてゐた。やはり古典とは違ふが、歴史小説の趣きがあつて、悪くない。染五郎ではまだ慶喜を演じるほどの厚みがない氣もするが、慶喜自体が當時三十歳くらゐのはずだから、丁度いいのかも。
「大津絵道成寺」は愛之助が五役を早変はりで踊り分ける、言はば「愛之助丈オンステージ」。正月らしい華やかさが良かつたのでは。「ラヴ様」ファンだらうか、珍しく女性の掛け声があつたやうな。「沼津」は呉服屋十兵衛に吉右衛門、雲助平作に歌六、お米に雀右衛門など。さすがに歌六が芸達者で渋い。
冷たい小雨の中を歸宅して、風呂に入る。湯船の讀書は「レイナムパーヴァの災厄」(J.J.コニントン著/板垣節子訳/論創社)。夕食は黒豆の五目煮、出來合ひの鰊の甘露煮で鰊蕎麦。食後に包種茶ともみじ饅頭一つ。
真山青果作の「将軍江戸を去る」。今年は大政奉還から百五十年らしい。徳川慶喜に染五郎、山岡鉄太郎に愛之助。昨年の「元禄忠臣蔵」で真山青果に感心したので今回も樂しみにしてゐた。やはり古典とは違ふが、歴史小説の趣きがあつて、悪くない。染五郎ではまだ慶喜を演じるほどの厚みがない氣もするが、慶喜自体が當時三十歳くらゐのはずだから、丁度いいのかも。
「大津絵道成寺」は愛之助が五役を早変はりで踊り分ける、言はば「愛之助丈オンステージ」。正月らしい華やかさが良かつたのでは。「ラヴ様」ファンだらうか、珍しく女性の掛け声があつたやうな。「沼津」は呉服屋十兵衛に吉右衛門、雲助平作に歌六、お米に雀右衛門など。さすがに歌六が芸達者で渋い。
冷たい小雨の中を歸宅して、風呂に入る。湯船の讀書は「レイナムパーヴァの災厄」(J.J.コニントン著/板垣節子訳/論創社)。夕食は黒豆の五目煮、出來合ひの鰊の甘露煮で鰊蕎麦。食後に包種茶ともみじ饅頭一つ。
2017/01/01
椿油
年越しだけは実家で過し、すぐに戻つて來た。実家は相変はらずだつたが、庭の椿が大木になつてゐたのだけは印象的だつた。無論、急に育つたのではなくて、昔、祖祖母と大叔父の家の庭にあつた椿から零れた種が芽吹いたものを移してから三十年、ずつと家の庭にあつたのだが、ふと今年、こんなに大きかつたつけ、と気付いたのである。今は沢山の蕾をつけてゐて、二月には真赤に咲くとのことだ。
知らんうちに立派になつたもんやなあ、と母に言ふと、ええお屋敷では椿は植ゑんもんやけどな、と言ひつつも、まんざらでもないやうだつた。老母が話すことには、昔は近所に椿油を絞つてくれる場所があつて、祖母は祖祖母宅の椿の種で油を作つてもらつてゐた、との由。そう言へば椿油つこてたなあ、と思ひ出したが、庭の椿で作つてゐたとは知らなかつた。
年越しは概ね、「細雪」(谷崎潤一郎著/中公文庫)を讀んでゐた。今、丁度中程くらゐ。細雪は話の筋なんて関係なく、滅び行く豊かさの最期の輝き、と言つた風情に浸るのがよい。今の日本には豪奢と言ふ言葉に値するほど厚みのある文化がほとんどないので。
知らんうちに立派になつたもんやなあ、と母に言ふと、ええお屋敷では椿は植ゑんもんやけどな、と言ひつつも、まんざらでもないやうだつた。老母が話すことには、昔は近所に椿油を絞つてくれる場所があつて、祖母は祖祖母宅の椿の種で油を作つてもらつてゐた、との由。そう言へば椿油つこてたなあ、と思ひ出したが、庭の椿で作つてゐたとは知らなかつた。
年越しは概ね、「細雪」(谷崎潤一郎著/中公文庫)を讀んでゐた。今、丁度中程くらゐ。細雪は話の筋なんて関係なく、滅び行く豊かさの最期の輝き、と言つた風情に浸るのがよい。今の日本には豪奢と言ふ言葉に値するほど厚みのある文化がほとんどないので。
2016/12/25
誰が殺したコックロビン
昨夜は某邦楽家のご家族のクリスマス会に飛び入り参加してゐたので、今朝は遅い起床。
一週間分の家事とその合間の讀書の一日。「だれがコマドリを殺したのか?」(E.フィルポッツ著/武藤崇恵訳/創元推理文庫)、``Quantum Computing since Democritus"(S.Aaronson / Cambridge University Press) など。
これから TV で、先斗町歌舞練場での「顔見世大歌舞伎」を観る予定。
一週間分の家事とその合間の讀書の一日。「だれがコマドリを殺したのか?」(E.フィルポッツ著/武藤崇恵訳/創元推理文庫)、``Quantum Computing since Democritus"(S.Aaronson / Cambridge University Press) など。
これから TV で、先斗町歌舞練場での「顔見世大歌舞伎」を観る予定。
2016/12/18
ヒューマン・ファクター
朝食はチアシード入りのヨーグルト、インスタントのスープ、クロワサン、珈琲豆が丁度切れてゐたので包種茶。
日曜日はいつも一週間分の家事と、その合間の讀書など。「ヒューマン・ファクター」(G.グリーン著/加賀山卓朗訳/ハヤカワ epi 文庫)。若い頃に旧訳で讀んだが、今回は新訳版で。物語の中で、「クラリッサ・ハーロウ」(S.リチャードソンの「クラリッサ」)、トロロープの「今生きること」(``The Way We Live Now")、デフォーの「ロビンソン・クルーソー」などのイギリス文學が印象的に用ひられてゐるのがちよつと面白い。
晝食は人参と玉葱のサラダを作り、レトルトのルーに適当にスパイスを加えてアレンジしたカレーライス、シラーを一杯だけ。夕食は、鯵の開きを焼いて、だし巻き卵、押し麦入り御飯、具沢山の味噌汁。
2016/12/11
「エクス・マキナ」
休日の洋風朝食ののち、朝風呂。午前中はゼミの準備。A4 ノートで 8 ページほど書いた。晝食のあとヴィデオで「エクス・マキナ」(A.ガーランド監督/2015)を観る。
カルト的にヒットした「AI 映画」らしいことに興味を持つて観てみた。映像は凄いが、内容は「AI 風味」の軽いスリラー。登場人物は三人だけ、場面はほぼ別荘の中だけの心理サスペンスで、フランス風(?)かも知れない。とは言へ、視覚効果は凄い。映画でなければここまで素晴しい映像は作れないだらう。クーポン券とつぶしたい暇がある人にはお勧めできる。無論、百三十年前に書かれたヴィリエ・ド・リラダンの「未来のイヴ」を読み返す方が刺激的で知的な時間の過し方だとは思ふが。
なお、「AI 風味」については、主人公のプログラマが美少女アンドロイド相手にチューリングテストをする、と言ふ基本設定であること、その中で「色を見たことのない色彩科学者」の思考実験に言及すること、アンドロイドの顔の表情のアルゴリズムが世界中のスマートフォンから集めたデータを基礎に作られてゐるとか「AI」のアルゴリズムは検索エンジンそのものだとか、それつぽいことを言ふこと、アンドロイドを開発した天才技術者の会社が "blue book" と言ふ名前でウィトゲンシュタインの「青色本」からとつたらしいこと、で凡そ全部。
夕方まで一週間分の家事をあれこれ。そろそろ白菜が美味しくなつて來たので、夕食はピエンロー。もちろんビール。あとは雑炊。さらに包種茶と焼き芋。焼き芋ブームが続いてゐて、色々な薩摩芋を試してゐる。夜は「やっぱり美味しいものが好き」(J.スタインガーテン著/野中邦子訳/文春文庫)など。
カルト的にヒットした「AI 映画」らしいことに興味を持つて観てみた。映像は凄いが、内容は「AI 風味」の軽いスリラー。登場人物は三人だけ、場面はほぼ別荘の中だけの心理サスペンスで、フランス風(?)かも知れない。とは言へ、視覚効果は凄い。映画でなければここまで素晴しい映像は作れないだらう。クーポン券とつぶしたい暇がある人にはお勧めできる。無論、百三十年前に書かれたヴィリエ・ド・リラダンの「未来のイヴ」を読み返す方が刺激的で知的な時間の過し方だとは思ふが。
なお、「AI 風味」については、主人公のプログラマが美少女アンドロイド相手にチューリングテストをする、と言ふ基本設定であること、その中で「色を見たことのない色彩科学者」の思考実験に言及すること、アンドロイドの顔の表情のアルゴリズムが世界中のスマートフォンから集めたデータを基礎に作られてゐるとか「AI」のアルゴリズムは検索エンジンそのものだとか、それつぽいことを言ふこと、アンドロイドを開発した天才技術者の会社が "blue book" と言ふ名前でウィトゲンシュタインの「青色本」からとつたらしいこと、で凡そ全部。
夕方まで一週間分の家事をあれこれ。そろそろ白菜が美味しくなつて來たので、夕食はピエンロー。もちろんビール。あとは雑炊。さらに包種茶と焼き芋。焼き芋ブームが続いてゐて、色々な薩摩芋を試してゐる。夜は「やっぱり美味しいものが好き」(J.スタインガーテン著/野中邦子訳/文春文庫)など。
2016/12/04
ランボー号
チアシード入りヨーグルト、バゲットにクリームチーズ、茹で卵、珈琲の簡易的な朝食のあと、朝風呂。午前中はラテン語の単語帳を少し拡充し、「漢文の話」(吉川幸次郎著/ちくま学芸文庫)を少し讀み進めてから、食材の買い出しなど。
晝食は十目塩焼きそば(豚肉、鶏肉、海老、烏賊、椎茸、筍、人参、キャベツ、もやし、莢豌豆)とビール。焼きそばは、具が充実してゐるときは鶏がらスープと塩で白つぽくさつぱりと、具が単純なときは醤油系かソース系で黒つぽく濃厚に、がよろしいと思ふ。
午後は一週間分の家事と、その合間にゼミの準備を少しして、原稿の構想を少し練り、「やっぱり美味しいものが好き」(J.スタインガーテン著/野中邦子訳/文春文庫)を讀む。
夕方になつて再び風呂に入つてから、夕餉の支度。昨日の簡素おでんに牛蒡天と茹で卵と豆腐と蒟蒻を追加。ぬる燗を五勺。おでんの殘りのスープで汁かけ飯風のものを作つて食す。下賎な食べ方だがうまい。
さて、心靜かに諸橋論語を看経する時間だ。
2016/11/26
シブミ
家事の他は讀書の一日。今日明日で「シブミ」(トレヴェニアン著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)をゆつくり読もうと思ひ、今朝から始める。
初めて讀んだのは確か高校生の頃だつたのだが、当時は滑稽な、と言ふほどではなくとも、戯画的な印象を受けたものだ。何せ、滅び行く日本の心「シブミ」を会得した暗殺者ニコライ・ヘルが主人公なのである。「アイガー・サンクション」の主人公ヘムロック教授も、大學教授で美術鑑定家でありながら、絵画蒐集の高額な費用を捻出するため殺し屋をしてゐる、と言ふ漫画のやうな設定だつたが、それを上回る造形。
ニコライ・ヘルはハプスブルグ家の血をひきながら、日本人に育てられて日本的精神の至高の境地「シブミ」を目指すに到り、囲碁とケイヴィングの達人で、狙撃や望遠カメラすら「近接感覚」によつて無意識に避けることができ、日常のあらゆるものを武器にする殺人技「裸-殺」を極めた世界屈指の暗殺者だつたのだが、今はバスク地方の寒村で情婦と庭師とともに靜かに引退生活を送つてゐるのである。
しかし今讀むと、トレヴェニアンにおいて漫画的な設定はあくまで形式なのであつて、その形式を徹底することによつて何か他のことを書いてゐるのである。トレヴェニアンは寡作だが作品はどれも凡庸な作家の傑作の遥か上であり、その中でも「シブミ」が彼の代表作であり最良の作だろう。
初めて讀んだのは確か高校生の頃だつたのだが、当時は滑稽な、と言ふほどではなくとも、戯画的な印象を受けたものだ。何せ、滅び行く日本の心「シブミ」を会得した暗殺者ニコライ・ヘルが主人公なのである。「アイガー・サンクション」の主人公ヘムロック教授も、大學教授で美術鑑定家でありながら、絵画蒐集の高額な費用を捻出するため殺し屋をしてゐる、と言ふ漫画のやうな設定だつたが、それを上回る造形。
ニコライ・ヘルはハプスブルグ家の血をひきながら、日本人に育てられて日本的精神の至高の境地「シブミ」を目指すに到り、囲碁とケイヴィングの達人で、狙撃や望遠カメラすら「近接感覚」によつて無意識に避けることができ、日常のあらゆるものを武器にする殺人技「裸-殺」を極めた世界屈指の暗殺者だつたのだが、今はバスク地方の寒村で情婦と庭師とともに靜かに引退生活を送つてゐるのである。
しかし今讀むと、トレヴェニアンにおいて漫画的な設定はあくまで形式なのであつて、その形式を徹底することによつて何か他のことを書いてゐるのである。トレヴェニアンは寡作だが作品はどれも凡庸な作家の傑作の遥か上であり、その中でも「シブミ」が彼の代表作であり最良の作だろう。
2016/11/19
451
雨音で目が覚めた。朝食のあと身支度をして、定例のデリバティブ研究部会自主ゼミに出かける。Ornstein-Uhlenbeck 半群の従属操作、乗法作用素など。ランチは重慶麻婆豆腐。
歸宅して午後は讀書など。「華氏 451 度 [新訳版]」(R.ブラッドベリ著/伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)。旧訳のやや冗長で讀み難い印象がすつかり變はり、こんなに凝縮された短かい話だつたつけ、と言ふ感じ。もちろん文字通り不朽の名作である。あとがきでも言及されてゐる F.トリュフォーによる映画化は、高校生の頃に友人宅で観た。暗いイメージの映画だつたとしか内容は記憶にないが、三十年以上前のことなのに観た状況は覚えてゐるところからして、傑作だつたのかも。
夕方になり、風呂に入つてから夕食の支度。大根千切りきんぴらと秋刀魚煮で冷酒を五勺。メインは塩豚と牛蒡の炊き込み御飯。若布と糸寒天の味噌汁。食後に種子島安納芋の焼き芋と包種茶。
歸宅して午後は讀書など。「華氏 451 度 [新訳版]」(R.ブラッドベリ著/伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)。旧訳のやや冗長で讀み難い印象がすつかり變はり、こんなに凝縮された短かい話だつたつけ、と言ふ感じ。もちろん文字通り不朽の名作である。あとがきでも言及されてゐる F.トリュフォーによる映画化は、高校生の頃に友人宅で観た。暗いイメージの映画だつたとしか内容は記憶にないが、三十年以上前のことなのに観た状況は覚えてゐるところからして、傑作だつたのかも。
夕方になり、風呂に入つてから夕食の支度。大根千切りきんぴらと秋刀魚煮で冷酒を五勺。メインは塩豚と牛蒡の炊き込み御飯。若布と糸寒天の味噌汁。食後に種子島安納芋の焼き芋と包種茶。
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