昨日、人の波が戻ってきたと思ったものだが、今日こそ本格的に戻ってきた。車中の読書は谷崎源氏、「御法」の帖。紫の上が死去。秋風にしばしとまらぬ露の世をたれか草葉のうへとのみ見ん、か……と無常を感じながら、出社。
夕方退社。帰宅して風呂。湯船の読書は「人間滅亡的人生案内」(深沢七郎著/河出文庫)。すごい。久しぶりに声をあげて笑った。無情を通り越した非情の世界とも言うべき、すがすがしい人生案内である。雑誌「話の特集」で連載されていた人生相談を書籍化したものだが、よくこれが連載できていたものだ。重ねて言うが、すがすがしい。「老子」にある「天地ハ仁ナラズ、万物ヲ以テ芻狗ト為ス。聖人ハ仁ナラズ、百姓ヲ以テ芻狗ト為ス」という言葉に似た、すがすがしさである。