「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/01/20

収容所でのコンパスの作り方

ようやく冬らしい寒さになってきたかな。往きの車中の谷崎源氏は「竹河」の帖。最近の帰りの読書は「大脱走」(P.ブルックヒル著/工藤政司訳/ハヤカワ文庫)。メインは収容所から脱走するためのトンネル掘りなのだが、計画を側面から支える細かい作業が面白い。例えば、証明書の偽造とか、細々した小道具の作成とか。

例えば、コンパスは以下の如し。壊れたレコードを加熱変形させてケースを作る。そこに、円形に切り抜いたボール紙に正確に目盛を描いたものをはめこみ、蓄音機の針を中心に刺す。方位磁針には縫い針を使い、その針の中心に軸受けを半田付けするのだが、その半田は牛肉の缶詰の空缶についているものを溶かして用いる。松脂は松林から入手したり、兵舎の板材ににじみ出たものを使ったりする。なんてことが、詳しく書かれている。まさに必要は発明の母、というか、捕虜収容所のようなところでも思いもかけないようなものが作れてしまうのだなあ、と、人間の創意工夫に感心する。

少し早めに退社して、神保町にて私用を一つ片付ける。古本屋でシムノンのメグレものなどを物色してから帰路につく。夕食は豚肉と油揚げと白菜の鍋。あとは饂飩。