「敵手」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)、読了。片腕義手の探偵シッド・ハレー、三度目の登場。やはりシッド・ハレーのシリーズはディック・フランシス性の典型例。典型的な主人公像に、典型的な苦難が次々と襲いかかり、主人公は典型的に耐え忍びながら戦い抜き、そして最後には、失ったものをある意味で取り戻す。黄金パターンである。
この「敵手」では、ほとんど 1 ページ目から「意外な犯人」が分かっていて、倒叙型ミステリの趣きもある。しかし、どのように犯人が暴かれるのかよりも、そのことでどのように主人公が苦しみ、どのように闘うかが主眼であるところにフランシス性がある。