朝食を済ませて、旅支度をし、熱海に出かける。 K 先生の還暦を記念した合宿型の研究会のため。 私は博士課程三年目の一年間だけ、(形式的に) K 先生が指導教授だったので、一応は門下生なのである。 しかし、この事実は関係者にもあまり知られておらず、 K 先生ご本人すら忘れている可能性があるので、 何故ここにいるのかといった風情で見られるかも知れないなあ、と思いつつ。
新幹線車内で駅弁の深川飯で早めの昼食。 駅弁といえば、吉田健一の「駅弁の旨さに就て」というエッセイを思い出す。
日本料理と西洋料理の違いについて長々と書いたあと、最後の段落に至っていきなり、 子供の頃に駅弁を買ってもらって旨かったという思い出を大人になっても忘れず、 駅弁を買うのを旅の楽しみにするような人は健康であり、そんな人こそどんな料理でも正しく味わうことができるのだ、 駅弁をまずいなんて言う食通にはなりたくない、と締め括ってしまう、印象的な小文である。
名人芸と言うには少々やり過ぎの感もあり、単に酔っぱらって書いたのではないかと思われもするのだが、何故か説得力がある。 「舌鼓ところどころ」(吉田健一著/中公文庫)に収められているので、興味を持たれた方はご一読あれ。
熱海駅からバスでホテルに移動し、午後から研究会に参加。