「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2017/01/03

浴室には誰もいない

午後はおせち料理の殘りを肴にビールなど飲みながら、「悪魔の手毬唄」(市川崑監督/1977年)を観たり。升ではかつて漏斗で飲んで……

さて、あつと言ふ間の一週間だつた。毎日が冬休みならいいのになあ。早く次の冬休みにならないだらうか。と思ひながら、湯船で「細雪」(谷崎潤一郎著/中公文庫)の最後のあたりを讀み、そのあとの夕食は、年末から仕込んで年を越したチキンカレー。シラーを一杯だけ。グラスの殘りでおせちを少し。

「浴室には誰もいない」(C.ワトスン著/直良和美訳/創元推理文庫)、讀了。非常に樂しく讀めた。中心の事件は、自称セールスマン実はスパイだつた男が失踪、その家主が彼を殺して始末したのか、それとも彼自身が事件を演出して逃走したのか、と言ふだけの単純な謎なので、いくらひねつても大きな驚きはない。しかし、シャープに書かれてゐるので、ミステリとして納得できる。また、本筋の警察の捜査と情報部の立場からの捜査が交互に書かれるのだが、この後者のとんちんかんさと両者のずれがとても可笑しい。こちらのファース風味に重点を置いて伝統的「お馬鹿スパイもの」として書くこともできただらう。しかし、プロットを邪魔せず、むしろ、互ひにからみあつて有機的な面白さに昇華されてゐるところが新しい。