「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2017/01/18

車中のナンパ

夕方退社。車中で「ダルジールの死」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ 1810)を讀んでゐると隣に、つばの広い黒い帽子をかぶり、やはり黒のマキシのフェイクファーコートを着た、やけに美女オーラを放つ女性が座つた。こんな格好が似合ふのは日本人なら「キイハンター」の野際陽子くらゐであらうな、などと思つてゐると、背の高い外国人青年が他の客をかきわけて彼女の前にやつて來た。

そして突然、「ハーイ、君はどこの國から來たんだい?」と英語で陽気に話しかけたのである。「イラン」。「ヘエ、ええ……と、日本で何してるんだい?」。「○○株式会社で○○を担当してゐます」。「いやあ、あんまり綺麗だから、ちよつと氣になつてさ」。「左様ですか」。…………と、氣不味い沈黙が續いたあと、「話せて良かつたよ、じゃ、また!」と青年は去つて行つた。ふーむ、これがナンパと言ふ奴か、流石アメリカ人は打たれ強いな、と、彼はアメリカ人に違ひないと決めつけた私であつた。

「非情のライセンス」を口遊みながら歸宅。風呂に入つてから夕食の支度。鶏腿肉を蒸して、胡麻油と塩胡椒のみ。リースリングを少し。のち、鶏飯(けいはん)。