また 8 時まで寢てしまつた。明日から 6 時に起きられるだらうか。休日の簡易的朝食のあとラテン語の勉強を少し。家事と讀書の一日。「田村隆一 ミステリーの料理事典」(田村隆一著/三省堂)、「愛は血を流して横たわる」(E.クリスピン著/滝口達也訳/創元推理文庫)など。晝食はお好み焼きとビール、白菜の漬物とハム。夕食は鶏肉と長葱と春菊の小鍋立てなどで熱燗を五勺ほど。
「愛は血を流して横たわる」、讀了。いかにも英国派のユーモアあり教養ありの、折り目正しい古典的ミステリ。上品で温かくも、てきぱきとした展開は讀み易く、だれさうなところはサスペンスで引き締められてゐて、一息に讀める。強ひて言へば、犯人に意外性がなく、解決編がややくどいか。
「田村隆一 ミステリーの料理事典」は料理の本では全くない。早川書房創業期の編集者、翻訳家、詩人の田村隆一が、料理に喩えてミステリに就て書いたエッセイ集。特に第 1 章の思ひ出話が面白く、各節冒頭に何故か昭和二十九年初頭にあつたことを箇条書きにしてゐるのも樂しい。例へば、「二月十三日 植草甚一氏訪問 "Moving Toyshop" の翻訳をお願いする」とか。この "Moving Toyshop" とはクリスピンの「消えた玩具屋」である。當時、植草甚一は井の頭線の池ノ上駅近くの学生下宿で四畳半二間の貧乏暮らし。毎朝、昨晩の残りをチャーハンにして食べてゐた、とか。
田村隆一は同書で、好きなミステリ作品の一つにクリスピンの「消えた玩具屋」を挙げてゐる。クリスピンをパブから生まれたユーモア文學と言ふ枠組みで解説し、さらには、パブは日本で言へば銭湯だ、日本で最初に銭湯を経営したのは福沢諭吉だ、と言ふ調子で脱線して行くのが愉快。