「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2017/01/02

映画「細雪」

晝食におせち料理と稲荷寿司でシャンパンを少々飲みながら、ヴィデオで「細雪」(市川崑監督/1983)を観る。

原作からの私のイメージとは相當に違ふし、話の筋も随分と簡略化の上に改変もされてゐるのだが、私は岸惠子(長女鶴子役)を見るのが好きだし、畳紙を一杯に広げたり、沢山の衣紋掛けに着物を出した場面なんかは懐しいなあ、などと思ひつつ、しみじみ樂しめた。全体に着物がどれも水色や桃色でぽつてりしてやぼつたいのだが、そこが関西らしい。粋筋でもない限り、晴れ着はかうしたものだ。鶴子の着物だけは、時々ちよつと垢抜けてゐる。意図的な演出なのかも。

映画の最後、東京に引越す鶴子が雪子に東京に遊びに來るやう誘ふのに、「來月は歌舞伎座で六代目が道成寺の道行から後ジテまで通しでやるんやてえ」と汽車の中から言ふ場面がある。少し説明的でわざとらしい。「六代目」とは菊五郎のことで、原作ではあちこちで菊五郎のことが言及されるし、当時の風俗を感じさせるためにも、ここの場面に差し込んだのか。それはさておき、最後の場面が汽車の見送りでの別れとは月並ではあるが、やはり鶴子の最後の台詞にはぐつと來る。

夕食は水炊き鍋。あとは卵を割り入れて雑炊。シャンパンの殘りを飲みながら、TV で歌舞伎座や大阪松竹座などからの初芝居の生中継を觀る。しかし、やはり初芝居は歌舞伎座に出かけたいものだ。

取り敢へず、いい正月であるなあ。