今月二回目の歌舞伎座。「六月大歌舞伎」第一部。「義経千本桜」より「碇知盛」。知盛に染五郎、義経に松也、典侍の局に猿之助など。平知盛が碇綱を身体に巻きつけて自害する有名な場面、血塗れの知盛と並んだ巨大な碇の図は一種、歌舞伎自体のアイコンの一つだと思ふ。そのせゐか何度か観たことがあるやうな気になつてゐたが、実は初めてかも。
もちろん人間が一人でこんな巨大な碇を持ち上げられるはずもなく、そもそも知盛は立つのもやつとの手負ひの身なのだが、それが絵になる以上は、碇綱を身体に縛りつけてその碇を海に投げ込むという荒唐無稽な自殺方法を編み出してしまふのが歌舞伎らしくていいな、と思ふ。