ああ良く寝た。電気代は節約したいものの、 老人は睡眠中に室温が 28 度を越えないよう気をつけろ、 と各メディアがしきりに忠告するので、 熱中症予防のため寝るときには空調している。 さて、今日も猛暑の一日だそうだ。軽い朝食のあと、洗濯などの家事。
朝風呂に入って、 「贋食物誌」(吉行淳之介著/山藤章二イラスト/新潮文庫) を読む。 夕刊紙の連載だっただけあって、くだらない話、特にエロ話ばかりなのだが、 ハードカバー版の初版が昭和四十九年だから今からは一昔前、 しかも著者がその時点から一昔前の思い出話をするから、 一昔前と二昔前の話、ということになり、世相の違いや類似が面白い。 今日読んだところには、買ったばかりの靴を家の三和土から盗まれて、 もっと金持ちのところから盗めばいいのに、と思ったという話があった。 昭和二十年代の思い出で、靴一足が月給くらいだったそうだ。 イラストの方には山藤氏が、同じ頃に通学の満員電車で弁当をスラれた、という思い出の絵を描いている。 母親が働きに出ていたため自分で作った麦飯の日の丸弁当だっただけに、 「その日の空腹は心底こたえた」そうである。
結局、貧乏人が貧乏人から奪うのは一種の近親憎悪なのではないか、 という内容なのだが、何故かそのエッセイのタイトルは「ヨーグルト」。 やはりその頃、安岡章太郎が勤務中の吉行淳之介に電話をかけると、 吉行氏が「その電話の近くにミルクホールがあって、ミルクは一杯二十円である。 ところでな、もう五円フンパツすれば、ヨーグルトというものが食べられる。これは旨いぞ」 と答えたそうだ。 そのことを安岡氏がその後もしきりに蒸し返した、という記述があることだけが、タイトルの理由である。 何故、この発言がしきりに蒸し返すに値するのかというところに、滋味があると思う。
朝風呂のあと、自家製のレモネードなど飲みながら読書をしているうちに昼時。 昼食の支度。塩鯖、胡瓜もみ(糸若布、ちりめんじゃこ)、炒り卵と細葱の冷たいチリソース麺。 夏には冷たい麺類だねえ、と暑さと冷たさを堪能したあと、 28 度に設定した部屋でしばらく昼寝ののち、午後も読書と家事。 ふと思い立って、本の整理(もちろん作業中は 28 度に冷房して)。 すると、なんということでしょう、並び換えただけなのに五百冊ほど床にあふれ出す始末。 バナッハ=タルスキの実例構成に成功したらしい。
夕食の支度。 実家の畑産のキタアカリにバタ、豆腐と刻み葱の白和え、茄子の糠漬、じゃこ入りとろろ御飯。 夜は、 "Three doors to death" (R.Stout 著/ Bantam books) より "Omit flowers" の続きを読んだり。