一番驚いたのは、行列式が最後まで出てこないことだ。実際、全 10 章の最終章が "Trace and Determinant" で、そこに至るまで定義すらされない。しかし、私自身、最終章までそのことに気付かなかつたので、行列式が全く出て来ない線型代數入門も自然にありうるのだ、と言ふことは一つの発見だつた。
その意味では、行列式の性質や具体的な計算をごちやごちや教へるのは、線型空間や線型写像、線型作用素の基本的な性質を學ぶべき線型代數入門の本筋ではないのかも知れない。しかし一方では、行列式は非常に不思議で豊かな対象なので、行列式なくして線型代數のどこが面白いのか、と思ふ人もゐるだらう。
いづれにせよ、非常にすつきりと書かれた教科書で、これで線型代數の入門が完了するわけではないが、線型代數の一番大事なところが一筆書きで分かつた、と言ふ氣にさせる入門書である。なお、演習問題が豊富なのも良い。既に入門を通り過ぎた人なら一目で分かる易しい問題が大半だが、おそらく正しいレベル設定である。ちなみに解答はついてゐないが、その選択も正しい。
ところで来週の月曜日からは、「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)を平日の毎朝、少しづつ讀んで行く予定。この本を選んだ深い理由はない。単に、基礎論は大學一年生の時に一般教養の「記号論理学」の講義を受けただけで、ほとんど何も知らないので一度勉強してみたかつたのと、たまたま新刊書で見かけたから。
ところで来週の月曜日からは、「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)を平日の毎朝、少しづつ讀んで行く予定。この本を選んだ深い理由はない。単に、基礎論は大學一年生の時に一般教養の「記号論理学」の講義を受けただけで、ほとんど何も知らないので一度勉強してみたかつたのと、たまたま新刊書で見かけたから。