私のやうな老人が皆から敬はれる記念日らしいが、終日、猫としか話さなかつたし、うちの猫は人間に換算すると私より年上のやうなので、誰からも敬はれない一日。せめて猫を敬ふ。
朝食は平日いつもの納豆定食。そのあといつもの平日のやうに、ラテン語と線型代數の勉強を三十分づつ。出勤する代はりに、午前中は數學を考へる。
昼食はお好み焼きと昨日のシャンパンの殘り。さらに、筑前煮でシャンパンの殘りを飲みつつ、生けた白菊を愛でつつ、労働と閑暇と人生に就て考察する。三時に珈琲といただきものの洋菓子。
夕方風呂に入つてから夕食の支度。筑前煮、豚肉生姜焼きにキャベツの千切り、御飯、ピーマンの味噌汁。
夜は高野豆腐を肴にシャンパンの最後の殘りを飲みつつ、「人間臨終図巻 4」(山田風太郎著/徳間文庫)の「八十九歳で死んだ人々」から「百代で死んだ人々」までを讀む。全巻讀了。最後は泉重千代さんなのだが、この本に挙げるやうな人だらうか、とも思ふ。実際、今の人は泉重千代が誰だか知らないのではないか。おそらく山風先生、最後の一文が書きたかつただけでは。それはさておき、名著である。