帰宅してお風呂。湯船の読書は「ラテン語のはなし」(逸身喜一郎著/大修館書店)。 昔、華厳の滝から投身自殺した藤村操という人がいて、 「巌頭之感」なる一種の遺書を立木を削って残した。 そこに「ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ」 という一節がある。 私はこれまでずっと、この「ホレーショの哲学」とは「ハムレット」に登場するホレーショの人生観である、 と思ってきた。
しかし、「ラテン語のはなし」によれば、この解釈は決定的なものではないと言う。 確かに、「ハムレット」のホレーショの哲学とは何なのか、良く分からない。 そして、この「ホレーショ」とはホラーティウスではないか、というのが著者の説である。 さらにその「哲学」とは、ホラーティウス「書簡詩」にある "nil admirari" (「何事にも驚かず」)の一句のことではないか、 と主張している。 この一句は森鴎外が「舞姫」の中で「一種の、『ニル、アドミラリイ』の気象」 と引用しており、 実は、藤村操は「舞姫」を読んだだけでホラーティウスを知ったつもりになっていたのでは、と。 これは非常に鋭い推理なのではないだろうか。 少なくとも「ハムレット」のホレーショ説よりはずっと筋が通っている気がする。
夕食の支度。 焼売の皮がまだまだ余っているので、またしても焼売。 毎日、蒸し器が活躍。焼売を包むのも上手になってきたような。 蒸し立ての焼売に黒酢と辛子。贋ビールを一杯だけ。 のち、鮪の角煮、菠薐草のひたし、大根の千切りの味噌汁、御飯。 食後に蜜柑を一つ。