午後は一月に一度の贅沢をしに歌舞伎座。「よろづの事よりも、わびしげなる車に、装束わるくてもの見る人、いともどかし」(枕冊子)と言ふことだし、それなりに身支度し、白ワインを水筒に詰めてグラス持参で出かける。三越地下の寿司岩でばらちらしを買つて、歌舞伎座へ。今月は、五代目中村雀右衛門の襲名披露。夜の部では襲名口上の他、「祇園祭礼信仰記(金閣寺)」で五代目が雪姫をつとめる。
金閣寺と満開の桜を背景に桜の木に縛りつけられたご令嬢が爪先で桜の花弁を集めて鼠の絵を描く、と言ふ場面のためだけに成立してゐるやうなお芝居なのだが、だつて歌舞伎なんだもの、それでよし。