夕方、退社して、 六本木にアガサ・クリスティの舞台「マウストラップ」を観に行く。 週末の夜だが、当日券にかなり余裕があったらしく、 ゆったりと観劇できた。 やはり古典には安定感というものがあり、 「ねずみとり」は過去に二三回は戯曲台本で読んでいると思うのだが、 けっこう楽しめた。
確かクリスティは、 「人々は少し驚かされることを好む」 というようなことを言っていたと思う。 スリラーやサスペンス、ミステリと言っても、 人々は本当にハラハラドキドキすることや、 驚天動地の驚愕の大どんでん返しをそんなに望んでいるわけではなく、 少し意表をついたあとで、ああそう言われればそうだな、 分かってみればそうとしか思われないな、 という騙し絵のような「少しの驚き」が一番好まれるのだろう。 クリスティはその塩梅が良く分かっていた作家だ。