昼休憩にお弁当を食べながら、 「アンソロジー カレーライス!!」(PARCO 出版) を読む。 33 人の作家がそれぞれカレーライスについて書いた文章だけを集めたアンソロジ。 池波正太郎、井上靖、向田邦子など昔の人の文章を読んでいると、 どうやら、家で母が作ってくれた懐しのカレーが「ライスカレー」、 外の店で食べる贅沢なカレーが「カレーライス」という使い分けが、 共通してあるようだ。
私は今まで、御飯にカレーのルーがかかっているのが「カレーライス」で、 御飯とルーが別々になっているのが「ライスカレー」である、 といった説を聞いたことがあるからか、 むしろ「ライスカレー」の方が高級という印象を持っていた。 まったく逆だ。 昭和のいつの頃からか、カレーライスとライスカレーの逆転が起こったのではないか。
そんなことを思いつつ、次々とカレー話を読んでいくのは面白い。 この本にはもちろん、大衆食とオトーサンの味方、東海林さだおの文章もおさめられているのだが、 てっきりあの「肉だらけのカレーを讃える歌」の話だろうと思っていたら、 大阪の自由軒についての文章だった。 ショージ君もつまらぬ食通になってしまったのだなあ、と残念でならない。 あの肉だらけのカレーの話は、実に貧乏でみじめたらしく、胸に迫る、実に良い話で、 青春と貧乏をカレーの香りで語り尽した傑作だった。 あの文章の中で「ぼくは今でもそうだが、 このころから、お酒をおいしいと思って飲んだことは、一度もない」 と言い切っていたショージ君はどこに行ったのだ、と尋ねたい。
ご興味のある方のために書誌データを挙げておくと、 「肉だらけのカレー」の話が出てくるのは、 「ショージ君の青春記」(文春文庫)の中の「漫画行商人」という章である。 ちなみに私は、 「全日本貧乏物語」(日本ペンクラブ編/福武文庫) というアンソロジで読んだ。