「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2013/03/20

ラグランジュ点

朝食をとりながらニュースを見ていると、 ハーシェル望遠鏡についての記事に 「ラグランジュ点」の語が。 昔から私はこの語にぐっとくるのだ。

さらっと言えば、(制限)三体問題の五つの平衡点のことだが、 どうしてだろう、数学と天文学のロマンなのだろうか、 私を魅惑してやまない語だ。 例えば、ハーシェル望遠鏡はこの五つのラグランジュ点の二番目(L2 点)、 言わゆる「オイラーの直線解」の一つにあり、 常に地球に対して太陽の反対側にあって相対的位置を変えない。 だから、宇宙観測に都合が良い。 確か、荒俣宏の「帝都物語」でも、 「永遠の満月」というロマンティックな言葉とともに、 ラグランジュ点の直線解が出てきた。

また、ラグランジュ点についておおざっぱな理解は簡単で、 私のような素人をもロマンに誘う魅力があるのだが、 一方で、きちんと説明し出すと非常に数学的に高度なので、その高踏的な魅力もある。 うかつに、「ラグランジュ点らぶ」とか言うと、ツッコミ所が満載なのである。 例えば、 「三体問題の平衡点の三つはオイラーが直線解として見つけ、 残りの二つはラグランジュが三角形解として見つけた」 という一文には、間違いが数え切れないほどある。 上に書いた、ハーシェル望遠鏡が L2 点にある、というのも間違いで、 実際は L2 点は安定ではないため、その周囲をある複雑な軌道で運動させるのである。

そう思うと、ラグランジュ点の魅力は、 現代数学をもってしても三体問題すらまともに解けない、 世界の現象の不思議さ、といったところにあるのだろう。