冬休みの課題図書が順調に消化されたので、もう一冊おまけ。 「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」。 邦題のせいで、つまらない自己啓発本だろう、と見過しかけたのだが、 「ガワンデ」という変わった著者名に見覚えがあった。 検索して、名著 「コード・ブルー」 を書いた外科医だったことに気付き、読んでみた。 結果、思わぬ拾い物だった。 もうちょっと真面目な翻訳タイトルはつけられなかったのだろうか。
主題は、「コード・ブルー」でも大きなテーマの一つだった、 医療事故としての手術ミス。 手術の安全性についてのエキスパートである著者は、 手術ミスを減らす対策の探求をWHOから依頼される。 この地球上で手術ミスで失われていく命の数は、 マラリアや結核に迫るほどで、 WHOが真剣に取り組むべき課題になっていたのである。 しかし、予算はほとんどつけられないと言う。 著者の唯一の手がかりは「チェックリスト」。 ある種の外科手術においては、簡単なチェックリストがミスを減らすことは、 既にある程度は実証されていた。 著者は、高層ビル建築、旅客機操縦、高級レストランのシェフ、機関投資家など、 非常に複雑なのにミスが許されない、しかしミスが起こりうる、 プロたちの現場にインタヴュを重ね、チェックリストの意味と使い方を学んで行く。 著者に許されたわずかなリソースで、 世界中の手術ミスを激減させるという奇跡を起こすことができるのか……というお話。
第八章の投資の話は若干、眉唾だと思うのだが、 全体に非常に面白かったし、チェックリストに対する考え方が変わった。 もし私が何かの手術を受けることになったら、 是非、その手術チームにはチェックリストを使っていて欲しいものだ。