一昨日、昨日と涼しかつたのだが、今日は全力で夏。辛い。少し疲れてゐるのか、昼休みにデスクでぐつすり眠つてしまつた。
帰宅して、まず風呂。湯船の読書は「ルーフォック・オルメスの冒険」(カミ著/高野優訳/創元推理文庫)。「巨大なインク壺の謎」で、読了。この圧倒的な馬鹿馬鹿しさ、阿呆らしさ。世は憂きものなりけり、と光源氏のやうに思ひ定めて悟り澄ましたこの私でさへ、日常の憂さを一瞬忘れるほどの脱力感。
やはりフランス人は偉大だ。イギリス人もナンセンスが得意だが、所詮、「お殿様のご乱心」めいた上品さや知性がすけて見えてしまふところを、このフランス人の駄目さ加減は、何の中身も底もなく、単に阿呆らしい。さすがダダイスムを生み出した国で、ダダイスト新吉も草葉の陰で反省してゐることだらう。こんな全身が脱臼したやうな小説は、誰の作品か忘れたが「機械探偵クリク・ロボット」以来だ。
この本を読んだ時間を返してくれ、と言ひたいが、そもそも私の人生全体が、今まで生きた時間を返してもらふべきものなのかも知れず、人生とはこれカミ頼みなのかも知れない。