昨日、キャヴィアに適したスプーンについてスタインガーテンが書いてゐたやうに思ふ、と書いたのだが、今朝、書庫で調べてみたらピーター・メイルだつた。「贅沢の探求」(P.メイル著/小梨直訳/河出書房新社)の「黒い真珠をほおばる」の章。
読み返すと、銀のスプーンは金属の味が微かに混じるので良くないが、他の素材なら何でもよい、と書いてある。しかし、プラスティックの短いスプーンは手軽で、軽く、輪郭なめらか(だから繊細な卵をつぶさない)、機能的かつ衛生的で使い捨て可能、妙なあと味もなく、しかも無料、などの理由から著者のお薦めである、とのこと。
「キャヴィアは楽しいときに食べても、悲しいときに食べてもいい。成功したあかつきにはお祝いに、悲惨な出来事があったときには慰めに。初めて百万ドルを稼いだ日には素晴しい御馳走となるだろうし、破産寸前に思いきって最後の贅沢とすれば、それ以上の格別な味わいとなるかもしれない。また情事の始まりに、あるいは終わりに。といった具合に口実はいくらでも転がっている。もし思いつかなければ、ただ健康のために食べてもよい。聞くところによると、キャヴィアは体にいいそうだから。」(P.メイル「贅沢の探求」より)