夕方早めに退社、外で一つ用事を片付けてから歌舞伎座へ。「壽初春大歌舞伎」夜の部を観劇。「番町皿屋敷」、「女暫」、「黒塚」。「女暫」が大変にめでたかった。
「女暫」の巴御前は玉三郎。私は二十五年くらい前から玉三郎を観ているが、若い頃はあまりに綺麗過ぎて歌舞伎の枠からはみ出してしまっているようなところがあった気がする。私の感覚が年寄臭いからか、今が丁度良いくらいに思う。しかし、私が観始めた頃でも玉三郎は既に四十歳くらいだったので、当時すら、いやいや若い頃の玉三郎はこんなものではなかった、光輝くような美しさだったのだ、と私に観劇歴自慢をする芝居好きがいたものである。その頃を見てみたかったのは確かだが、舞台芸術とはそういうものなのでしようがない。むしろ今、目の前にあるものの良さを味わうべきだろう。