「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2013/12/29

麻雀の戦績

イギリスの数学者リトルウッドは、毎日トランプの一人遊びをして、戦績を記録につけていた。 それに習ったわけではないが、半年ほど前から毎日、コンピュータを相手に麻雀を半荘だけして、その得点と順位を記録している。

左のグラフが日毎の得点をプロットしたもの。私はコンピュータより強いのだろうか。 このグラフからは、やや高得点側に偏っている気がする程度で、はっきりしない。 なお、得点の分布がある程度まとまって見えるのは、順位に応じてボーナス点、ペナルティ点が加算減算されるルールのせい。

平均点を計算してみても、10 点に届かない程度で、ぱっとしない。では、得点ではなくて順位を見てみよう。 私が各順位をとった回数をグラフにしたものが左。私が一位になることが確かに多いようだ。 まったく力量が互角だったなら、私は 4 回に 1 回くらいしかトップになれないはずだが、3 回に 1 回程度になっている。 具体的には一位から順に 71 回、50回、37回、44回である(合計 202 ゲーム)。問題はこれが偶然に起こる程度なのかどうか。

こういう時にはまず、力量に差はなく結果は偶然である(四面体のサイコロをふっているのと同じ)、という仮説をおく。 そうなら、各順位のヒストグラムは期待値としては 1/4 ずつ、今の場合では 202/4 = 50.5 回ずつになるはずだが、 そこからのズレを測るためのカイ二乗量というものがある。 私の場合では 各順位の回数から期待値 50.5 を引いて二乗し、期待値 50.5 で割ったものを、足しあわせる。 その結果は 12.77 程度である。結果は偶然だという仮説のもとでは、 このカイ二乗量は(自由度 3 の)カイ二乗分布という知られた分布に従うことが理論的に分かっている。 だから、この 12.77 という数字が、起こっても仕方ないだろうなと思える程度の数字なのか、 まず偶然に起こるとは思えない、という程度なのか、という判断が出来る。 実際、この数字は 99.5% 起こらない程度に珍しいので、 上の仮説は棄却される。つまり、私とコンピュータの麻雀の力量は同等ではないだろう。

上の「理論的に分かっている」が怪しい気がする方のために、 四面体のサイコロを 202 回ふってカイ二乗量を計算する、ということを千回繰り返して、 結果をヒストグラムにしたものが左のグラフ。もちろん、実際にサイコロを20万回ふるのは辛いので、 コンピュータによる擬似的な数値実験である(青い線の方)。 赤い線の方が理論的なカイ二乗分布から書いたもので、良く一致している。 また、12.0 以上の値がほとんど起こらないことも感じとれる。