「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2013/12/23

クリスマスにはクリスティ

相変わらず、いくらでも眠れる。このまま新年まで、いや春まで寝ていたい。 朝食兼昼食は、トースト二枚にチーズとクランベリージャム。赤ワインを一杯だけ。 さらに三時間も昼寝してしまった。 午後は「ポアロのクリスマス」(A.クリスティ著/村上啓夫訳/ハヤカワ・ミステリ文庫) を読んだり。 やはりクリスマスはクリスティ。

ここ数ヶ月ほど暇を見つけてクリスティの作品を読み返していたのだが、 やはり大したものだな、と感心することが多かった。 嵐の海の件 と同様の勘違いだったら申し訳ないのだが、 「人は少し驚かされることを好む」と言ったのは(多分)クリスティだったと思う。 この「少し」の塩梅の絶妙さがクリスティで、 大胆ながらどこまでも自然な伏線と独創的で巧妙なミスディレクションが、 ああそうだったか、当然気付いても良かったのに、という楽しい驚きを演出している。

読み返した中で特に感心した作品は以下の三つ。 どれも傑作だが「オリエント急行の殺人」や「アクロイド殺し」ほどには有名ではないので、意外と読んでいない方が多いのでは。 クリスマスの読書にいかがでしょう? 始めの二つ、「五匹の子豚」と「三幕の殺人/悲劇」がポアロもの、「予告殺人」がミス・マープルものなので、お好みにあわせてどうぞ。

  • 「五匹の子豚」(山本やよい訳/ハヤカワ文庫)
  • 「三幕の殺人」(長野きよみ訳/ハヤカワ文庫) / 「三幕の悲劇」(西脇順三郎訳/創元推理文庫)
  • 「予告殺人」(田村隆一訳/ハヤカワ文庫)

なお、「三幕の殺人」と「三幕の悲劇」は同じ作品だが、ある事情で結末の部分が少し違う。 私見では「悲劇」の方が作品全体と犯人の動機に統一感があるものの、やや後味が悪いので、「殺人」の方がクリスマス向きかも知れない。