先日届いた母からの手紙に「これでたまには良いものでも食べなさい」と金一封されていて、なるほど毎日漬物と目刺しではいけない、と思い立ち、歌舞伎座へ。三越で冷酒を一合と握り鮨の折詰を買い、飲み食いしながら昼の部を観劇。
「鬼一法眼三略巻」と「隅田川続俤」より「法界坊」。やはり見所は「法界坊」の最後の踊り「双面水照月」か。「長谷川平蔵であーる」の鬼平こと吉右衛門が花も蕾の娘役に化けて振袖で踊るのが、妖怪変化どうこうよりも、単純に怖い。
ちなみに、野分姫と法界坊の霊がおくみの形をとった、というややこしい設定で、吉右衛門に女の台詞があるのだが、見事な女形の声でびっくりした。まさかそんなはずはないので、すぐ気付いたのだが、野分姫を演じた児太郎本人が黒衣として後ろについてアテレコの要領で代わりに声を出すのである。「付け声」と言うらしい。初めて見た。