「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2017/03/27

「地球の長い午後」

今週は冷たい雨の朝から始まり。春はもう少し先のやうだ。夕方退社。午後から晴れだしたが、やはり空気は冬の冷たさ。

「地球の長い午後」(B.W.オールディス/伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)、讀了。筋らしい筋はないのだが、人類の遠い遠い未來を描く想像力と、植物に呪はれたやうな世界の創造が凄い。地球も月も既に自転を止めていて、差渡し數マイルもある巨大な蜘蛛状の植物が、地球と月の永遠の晝の間に糸を張つて移動してゐる、なんて無茶苦茶なイメージをどこから思ひついたのやら。

ちなみにタイトルは、アメリカ・ペイパーバック版から訳した「地球の長い午後」より、原題の "Hothouse"(「温室」)の方が趣味が良いと私は思ふ。こんな作品だからこそ、卑近で地味かつコンパクトに「温室」と行きたい。まあ、趣味は人それぞれではあるが。

次の名作 SF を讀もう計画は、終末世界もの續きで、J.G.バラード「沈んだ世界」の予定。バラードは憑かれたやうに世界の終りを何種類も書いてゐるが、「地球の長い午後」の高温多湿感にあはせてみた。