「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/06/13

「証拠は語る」

週末に「証拠は語る」(M.イネス著/今井直子訳/長崎出版)を読了。これまで読んだイネスの中では一番好み。

イギリスの田舎の大学で起こつた、何故か巨大な隕石が凶器の殺人事件。うさんくさい登場人物たち(全員、大学関係者)が次々に現れては、古典からの引用を散りばめながら、謎めいた供述をしたり、行動をしたりで、事件を混迷させていく。そんなペダンティックな環境が昔馴染みでもあるインテリのアプルビイ警部の活躍。毒にも薬にもならない、楽しい週末のお供的ミステリ、といふ意味で最高。

唯一気になるのは、おそらく誰もが思ふことだらうが、なぜ邦題を「証拠の重み」または「証拠の重さ」にしなかつたのか、と言ふことだ。そもそも原題も "The Weight of the Evidence" なのに、なぜわざわざ凡庸な題名に改変したのか。語呂が良くないと思つたのだらうか。謎だ。

来週末は、「アプルビイズ・エンド」(M.イネス著/鬼頭玲子訳/論創社)の予定です。