「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/10/22

蒲焼の長命術

洗濯などの家事をしてから、午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミ。重川「確率解析」より、Ornstein-Uhlenbeck 半群の超縮小性、対数ソボレフ不等式など。K さんによる安定した講義。午後に仕事があつたのでランチは失礼して帰る。

夕食はいただきものの鰻の蒲焼、南瓜の煮付け、沢庵、豆腐と葱の澄まし汁。折角の鰻丼だから、久しぶりに白米を炊く。私は普段、押し麦との三七なのである。いやもう、銀シャリとは良く言つたもので、目に眩しいくらゐだし、無闇に美味しい。世間の人々が太り過ぎてゐるのはきつとこのせゐだらう。

ところで、もちろん鰻の蒲焼は焼き立てが美味しいのであつて、通は鰻を割くところから(一杯やりながら)焼き上がりを待つのだが、我々下々の民草が口にするのは大抵、冷たくなつたものでゐる。それを美味しく食べる方法が「味覚極楽」(子母澤寛著/中公文庫)に、竹越三叉(竹越與三郎)からの聞書として出てゐる。

曰く、まづ土鍋にいい酒を入れて、強い火にかける。箸でかきまぜてゐると、アルコール分が立つてくるから、マッチで火をつける。ぽつと燃えるわけだがすぐに消えるので、これを火がつかなくなるまで繰り返す。この熱いところに蒲焼を入れて一分。できあがり、と言ふ段取りである。

マッチで火をつけるのが面倒だが、要はアルコールを飛ばせばいいのだらうから、私は単に煮切つてゐる。「土鍋」がポイントなのかどうかは不明。私はまじなひのつもりで小型の土鍋を使つてゐる。「いい酒」は大事。ちなみに、私の経験では、冷凍の鰻でも同じ方法でなかなか美味しくできる。