「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/09/05

五番目のコード

また月曜日だ。しかも、真夏日。私の夏は明日も続く。

「五番目のコード」(D.M.ディヴァイン著/野中千恵子訳/現代教養文庫)、讀了。ディヴァインはいつも、クリスティの凡作をリファインしたやうな印象。これは誉めてゐるのである。

「五番目のコード」は、犯人が被害者の側に、棺桶の八つの持ち手(cord)の位置を示すカードを順に置き残して行くと言ふ連続殺人ものだが、良く練られたプロット、丁寧に書き込まれた伏線、「なるほどそうだよね」と言ふ少し意外な犯人が、デイム・アガサを思はせる。

クリスティは確か、「人は酷くではなく少し驚かされることを好む」と言ふやうなことをどこかに書いてゐたはずだが、その感じ。このプロットと犯人もまさにその通りで、普通に考へて説得力のある現実的な「意外な犯人」はこれしかなく、その安心感のある驚きが、まさにクリスティ的。